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クラシック音楽を中心にしたポスト現代音楽のためのブログ


by ralatalk

ヘンデルを試し聴きするつもりで夜が明け

昨日、マンゼのヘンデルを聴きました。夜も遅いので最初は試し聴きするだけと思ったのですが、ついつい全部を聴いてしまいました。これぞ天上界のバイオリンの響き。極上の美しさと愉悦。

マンゼとほかのモダン・ソリストでは、楽器の違いの他にも大きな違いがあるのですけど、これが何であるか、しばらく考えています。ありきたりの演奏技術、表現力、音楽性という範疇で収まるパラメータではないことは確か。

で、しばらく考えてふと思ったのが、子供時代にみていたタイガーマスクの後編ででてくる虎の穴のボス、タイガー・ザ・グレイトが、不甲斐なくも最強幹部が玉砕してしまったことに対して怒りながら、部下のミスターXに語ったお言葉。



「ブラックタイガーの≪スピード≫、ビッグタイガーの≪力≫、キングタイガーの≪反則≫。このすべてを持っているのがこの私だ!次はこの私がタイガーを処刑する。」

てな内容だったのですけど、子供ながらに、≪反則≫という言葉が妙に斬新だったのです。昔から不思議に思っているのですが、プロレスの反則は、レフリーが反則負けをコールするまでは、何回も可能だし、不思議なことに反則を使うのは悪役レスラーと決まっている。しかも出場停止処分もなし。この人間社会の不条理を単純化したようなわかりやすい試合構造によって、観客は興奮するのですね。

音楽の場合も、形どうりにかっちり決まるのではなく、綻びというかアクセントがある部分に注目が行きます。ショスタコやプロコ、ストラヴィンスキーなんていうのは、反則技の名人ですし、そういう意味では大作曲家は、ちょい悪も含めてすべて悪役ですね。

次に、オリンピックでの吊り輪競技のアナウンサーの解説も興味深い。
「この競技は、技の難易度を表すA得点と技の正確性を示すB得点の合計で決定されます。」

吊り輪のおもしろいところは、A得点を上げようと難しい技を多用すると、筋力を消耗してしまってあとの演技でミスをする可能性が高くなってしまうことにあります。

でも、これを音楽に当てはめて採点するとなると、現在の一流ソリストではA、Bともにかなりの高得点になって差がつかないはず。かと言ってC得点として、音楽性という芸術点をつけるとすると、これは評点が大きくわかれて客観性がなくなる感じがします。

 そこで先ほどの『反則』を評価点に加えてみます。音楽でいうところの反則とは何か?。これは、発想力、大胆さという言葉に置き換えることが可能かもと思っています。たぶんマンゼは、この大胆な発想力において、他の追随を許していないソリストと言えるかもしれません。しかも反則を仕掛けるタイミングも絶妙で、しかも同じことを繰り返してやらないことに男の反則の美学を感じます。

●追記
ヴァイオリン・ソナタ全集 マンゼ(vn)エガー(cemb)

 ヘンデルのソナタにおいては、今の時代、バロック・バイオリンとチェンバロで演奏しない形態の演奏は、反則なのかもしれません。異端が正統となり、正統が異端となるターニングポイントを少し過ぎた地点。モダン側のソリストは、コンクール・ミュージックとしてやっていれば、そこそこの評価を得られたのですけど、これからは、よっぽど考えて演奏しないと音楽としての説得力がなくなるという難しい局面にきているのですね。ムターの苦労もわかろうというもの。

 マンゼの相棒のエガーについては、今回あまり書けなかったですが、音楽全体をプロデュースしているのは、実はエガーかも。実演のときもそうでしたが、かなりの大量なサインをマンゼに送っていましたからね。引く時は引き、でるところでは出る。実によい伴奏者ですね。マンゼ以外のソリストの場合ではどうかも興味のあるところです。
by ralatalk | 2008-08-27 12:46 | 音楽エッセイ