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クラシック音楽を中心にしたポスト現代音楽のためのブログ


by ralatalk

松村禎三氏、ご逝去

 松村禎三氏がご逝去なされたことを知りました。かなり闘病生活が長く、いつかはこのときが来ると予感はしていたのですけど、いざそのことを知らされて、ショックでほとんど一日中、ぼっとしておりました。ただ、よかったのが訃報を知ったのがバイオリンのレッスンが終わった後だったので、レッスンの前だと休んでいたかもしれません。

 松村禎三氏は、私のなかでは日本音楽史上で最高の作曲家。一作品に自分の持つすべてのものを容赦なく注ぎ込むという壮絶な作曲法、その姿勢、芸術家としてかくあるべしという生きる手本として最も尊敬していた人であるので、やはり亡くなられてしまったショックは、大きいし、松村氏を越えるレベルにある日本の若手作曲家は、今のところ皆無なのもとても悲しい。もちろん才能を感じる人は何人かはいるのですけど、人生の大きな苦難とか試練とかをくぐってこなければ、芸術の卵はうまく孵らないのかもしれません。

技法が斬新だとか、意表をつく作品、難しい用語をちりばめた似非哲学を気取った作品は結構あるのですけど、作曲家自身がそうした世界に入り込んでいなければ、まったく説得力がないし、聴衆を感動させることはないのです。21世紀にも天才を気取る前衛作曲家はたくさんいても、バルトーク、シェーンベルク、ショスタコービッチ、オネゲル、リリ・ブーランジェの表現する多元的な深遠の世界に到達できている作品はほとんどないのが実情。ましてやバッハの深遠は更に遠いですからね。

 その点、松村氏は、何度か死にかけていますからね。まったく説得力が違います。その死の淵を見つめつつ、生きようとする強靭な意思の力が、作品の本質。執拗なオスティナートは、生命の蠢きを表すのですね。寡作家ということもあって、その生涯に駄作なしです。数では及びませんが、その作品の質でショスタコービッチに匹敵できる作品を残すことのできた偉大な作曲家に、心からのご冥福をお祈りいたします。
by ralatalk | 2007-08-12 23:31 | 音楽エッセイ