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クラシック音楽を中心にしたポスト現代音楽のためのブログ


by ralatalk

ショスタコーヴィチの反抗

美探先生から以下のDVDを借りることができたので、感想などをひとつ。
なるべくネタバレにはならないように書いておきますね。
音楽ドキュメンタリー

ショスタコーヴィチ against スターリン/戦争交響曲集

製作監督:ラリー・ワインスタイン
音楽:ワレリー・ゲルギエフ指揮/キーロフ劇場管弦楽団、他


このDVDを観てみて、美探先生が、なぜに交響曲第4番が気に入ったのがわかってニヤリ。このドキュメンタリは、4番を中心に据えて物語が進行し、しかも使われている映像がとても曲とマッチしているので、はじめて4番を聴いた人でも聴きたくなる気分に高揚させてくれます。



クラオタ的な視点からすると、この曲は、解釈が難しい交響曲なので、一回聴いたレベルでは、わかるようになるとはとても思えないのですが、リアルな映像と結びつくと、こうもわかりやすく感じてしまうから不思議です。

スターリンが歴史に登場し、いよいよ悪夢の時代が到来する序曲として、この曲の第一楽章を捉えているところが秀逸。そして、スターリンの死を悼む曲として、この曲の終楽章が使われるのですが、『国家に対する芸術の勝利の音楽』としても使われているのがすごい。映像の組み合わせによっても、こんなにも印象が変わってしまうのかと、かなりびっくりしました。確かに、そういう解釈は説得力がありますね。特にこの曲はスターリン時代には演奏されず、死後に演奏されることになるのですが、DVDでは、この間、28年間にたくされた思いの丈が、ティンパニの強打とともに、ものすごい高い圧力で一気に噴き出すという感じです。この曲は、最後は静かに終わるのがとても重要なポイントですが、曲が終わる6分くらい前からうまく映像を組み合わせて、フェードアウトするように制作されており、この点でも意味深いものです。

内容的にかなりおもしろいものなので、ショスタコ関係に興味のある人は必見ですね。
なんせ、生ショスタコがピアノを弾いたり、演説してたりするシーンが出てきますからね。(これは購入することにしました。)

ただ、このドキュメンタリの構成に疑問を感じる部分もあって、あまりにもショスタコをヒーローとして扱っている点が気になります。スターリン包囲戦の極限下での7番の演奏の逸話とか、いくら民衆を勇気づけるためとはいえ、ショスタコの交響曲のなかで最大の長さと体力を要求する曲を、飢餓状態でふらふらの状態の楽団員が演奏したとは信じられないところです。それに、この曲に関しては、スターリンのプロパガンダに利用されたという一面ももっており、それが、ソビエトの民衆にどう捉えられていたのかというインタビューも入れてほしかったような気がします。

ショスタコについては、スターリンに利用されたことを反省、苦々しい思いで第8番を作曲したということで、うまくまとめられていますが、はてさてそれで良いのか。

ショスタコが他の作曲家とかなり視点が違う点は、他の大作曲家にあるような大芸術を民衆のために授けてやったという、上から下への視点が、中期以降の作品ではほとんどなく、いつも力のない民衆の立場から、下から上を遠く見上げる視点で作品が書かれているところ。しかも、荒れ狂う音楽の中にあってさえも、かなり冷静に書かれている部分に心底どっきりさせられる部分が多くあり、「この人は、歴史の行く末を見定めようとしているぞ。」という感じです。

ショスタコの作曲した曲は、生前かなり話題になった曲が多いのですが、そのときソビエト民衆はどう受け取っていたのか、続編を作る予定があるのなら、正直な意見がまったく言えなかった時代の、真実の声を聞いてみたいですね。

スターリンの時代到来
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悪夢の時代の到来を予見
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悪夢の町
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交響曲第7番でファシズム(スターリン?)に抵抗
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スターリン死す。
 ※プロコフィエフも同じ日に逝去。
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交響曲第4番、スターリンの死後初演。
 果して芸術は国家に勝利できたのか?

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↑うまくまとめられ過ぎていると感じたら、疑問に思うというのが、扇動的ジャーナリズムに対する民衆の知恵かもです。イラクでの大量破壊兵器はなかったのですからね。
by ralatalk | 2007-07-09 00:20 | 音楽エッセイ