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クラシック音楽を中心にしたポスト現代音楽のためのブログ


by ralatalk

社会人になったらショスタコを聴こう

 最近、私のまわりの人達は、ショスタコブームになっており、交響曲全集とか、弦楽四重奏曲全集とか大人買いしてくる人もいます。びっくりすることに、これまでクラシック音楽にあまり興味がなくて、ショスタコも知らなかった人が大人買いしているのですね。
 幸いにしてショスタコの全集は、4000円くらいから手に入るし、弦楽四重奏曲は、2000円から手に入ります。それと、ついでに「ショスタコーヴィチの証言」という本も買っておくと完璧ですね。
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↑社会人のための激安ショスタコセット。総額7,500円くらいですかね。




ということで、火付け役の私も、恥ずかしながら2番、3番、6番は持ってなかったのですが、ちょっとこれはまずいなあと思って、個別に購入しようとしたのですが、全集で買った方が安いので、安くて旨いと世評が高い、バルシャイの全集を買ってきました。
 で、早速、2番、3番、6番、10番、11番と聴いてみたのですが、これが実におもしろい。ショスタコービッチの場合は、5番の以前と以降では、音楽の方向性が違うのですね。5番以前では、前衛指向というか、音楽のすべてを試してやろうという野心満々の意気込みがうれしい。ただ、3番の後半のあたりからは、不安の感情が入り、4番では混乱している感じもしないではないです。

 6番でも、何か方向性に迷いみたいのがみえるような気がします。7番以降は、戦争交響曲に突入し、8番でその頂点に。9番は、おなじみの世界をあっと言わせた軽交響曲。ここで、スターリンに睨まれて、しばらく交響曲はかけなくなり、スターリンが死んでから10番を作曲。この曲にも方向性の迷いがありますね。10番は、世論が賛否両論で、当局の干渉が緩いとみると、11番 1905年を作曲。この曲は、かなりすごいですよ。クラシック音楽史上もっとも凶悪な作品。血の日曜日事件を音楽でリアルに再現。銃撃を浴びせられて、殺されていく無数の人々、この後に何ともいえない空虚で瞑想的な音楽が流れます。

私は、久しぶりに聴いて、涙がでました。これって、アメリカ軍が虐殺しまくっているイラクの民衆ではないのかと、妙にシーンがかぶります。そして、まったく何事もなかったように報道しているアメリカ万歳の日本のマスコミ。「大量殺戮兵器はいったいどうなったんでしょうか。」 何たる欺瞞。こういう人達が平和主義を気取って戦前の日本の批判をしているのですからね恐ろしくなります。

イラク民衆も宗教上の違いで、お互いに殺し合っているし、敵となる者なら、たとえ親、兄弟でも密告して処刑せよといった暗黒の時代。ショスタコの生きていたソ連という国の亡霊は今でも生き続けているのですね。

 こうしたすさまじい世界で、人として生きるための真実を伝えるべく、自分の曲に暗号のようにメッセージをたくさん刻み付けたショスタコ。このおかげで、かなり彼の曲は難解と言われるのですが、最近、私はこのメッセージが少しはわかるような気がしています。例えば、14番の死者の歌。青年時代には、ほとんど理解できていなかったのですが、今、この曲の真実がわかるようになってきたような気がします。
「私の交響曲は、民衆のための墓碑である。」
「社会の不条理で死んでいった民衆の一人一人のために曲を作りたい。ただ、それができないので交響曲を書くのだ。」
「若い時代の死に対する願望は、現実逃避の手段に過ぎない。本当の死を考えて人生を考えてみたまえ。何をなすべきか、そこからわかってくるであろう。」

よく、バッハの音楽は、年をとってからでないとわからないと言いますが、ショスタコーヴィチの場合もそのような深淵な音楽なのかもしれませんね。
by ralatalk | 2007-05-15 02:08 | 音楽エッセイ