移動ドのまじめな研究(その2)
2007年 02月 14日
楽典の基礎なんですけど、意外に知らないというか勘違いしている人も多いのでびっくりします。この区別ができていないと移動ド読みをするときに混乱するのです。
音名は、その名の通り、音の絶対的な高さを表す用語です。
階名は、相対的な音の高さを表す用語です。
と言っても理解してもらえないでしょうから、例をあげてみます。
私のバイオリンの先生である美探先生は、私に分散和音を弾けと指示するときには、
かならず、こう言います。
「ハ長調のドミソ、ドファラでお願いします。」
「ト長調のドミソ、ドファラでお願いします。」
「二長調のドミソ、ドファラでお願いします。」
ここでいう、ドミソ、ドファラが階名です。階名は調によって変わりません。
演奏するときは、階名を音名に変更して弾きます。
ハ長調の場合は、
ドミソ→C,E,G ドファラ→C,F,A
ト長調の場合は、
ドミソ→G,B,D ドファラ→G,C,E
ニ長調の場合は、
ドミソ→D,F#,A ドファラ→D,G,B
ここのC,E,Gなどの英文字が音名というのもので、音の絶対的な高さを示します。
ここで、迷える森の美女な先生なら、以下のように教えてくれるでしょう。
ハ長調の場合は、
ドミソ→ド,ミ,ソ ドファラ→ド,ファ,ラ
ト長調の場合は、
ドミソ→ソ,シ,レ ドファラ→ソ,ド,ミ
ニ長調の場合は、
ドミソ→レ,ファ♯,ラ ドファラ→レ,ソ,シ
この呪文によって生徒さんは、簡単に迷える子羊になってしまうのです。つまり移動ドでの混乱は、階名と音名を区別できていないことが原因の大半なんですね。
ここで、補足しておくと、日本国の音名は、ハニホヘトイロハになるので本来は、
となりますが、「なんぢゃこれは!」という感じですね。「ニ長調のドファラはニトログリセリンかよ!」てなベタな突っ込みが入る感じです。これでは、笑ってしまって音をイメージできません。
ハ長調の場合は、
ドミソ→ハ,ホ,ト ドファラ→ハ,ヘ,イ
ト長調の場合は、
ドミソ→ト、ロ、ニ ドファラ→ト、ハ、ホ
ニ長調の場合は、
ドミソ→ニ、嬰ヘ、イ ドファラ→ニ、ト、ロ
日本では音名をドイツ式、あるいは英米式で読むのが慣例で、前者はクラシック音楽、後者は商業音楽で使われることが多いです。クラシックの場合、なぜドイツ読みにするのかといえば、明治時代に輸入されてきた西洋音楽の先生にドイツ系の教師が多かったこともありますが、「デス」「フィス」「エス」などの臨時記号の読み方がカッコいいからです。(笑)
ちなみに各国の音名の読み方は、ウィキペディアにまとめられているようなので
そちらを見てください。ただし、イタリア式とフランス式は無視して読まないでください。迷える森の住民になってしまいます。
で、先程の例に戻りますが、私の師匠である美探先生は、生徒に分散和音とかスケールなんかを弾かせる場合は、「楽譜は見ないで弾けるように」という注文がつきます。暗譜せよというよりかは、スケール感覚を身に付けよというニュアンスが強いのです。これがまさに移動ドの感覚です。例えば、バイオリンのA線の1の指を押さえるとBの音がでますが、この音を主音、つまりドにした音階は、ロ長調になりますが、楽譜にするとこんなにシャープがつきます。こんなの見たら、初心者はビビリますよね。
でもそんなシャープがどうのこうのということを考えずに、
1−2(スライド)12、(スライド)1−2−34
ド レ ミファ ソ ラ シド
※1は人指し指、2は中指、3は薬指、4は小指、ーは指1本分くらいの間隔をあけます。スライドとはポジション移動のことです。
という風にロ長調の音階が簡単に弾けてしまいます。
同様にE線で同じ指使いでやると、
あの伝説の嬰ヘ長調が弾けているではありませんか。すごいです。
本来は、移動ドをやるときは、楽譜をみないで演奏したり、歌ってみるというのが実は重要なことで、先に楽譜を見てしまうと、移動ドがかなり恐怖に思えてくるのですね。移動ドにとっては、ハ長調、嬰へ長調なんていうのは、主音ドがCなのかF#なのか程度の差でしかないというのが、強みです。
※感心するのは、美探先生の指導で、ロ長調の音階をやれとか嬰ヘ長調でやれとかとは言わずに、A線を使った音階、E線を使った音階というふうにおっしゃられているのですね。これだとお子様でも大丈夫です。