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クラシック音楽を中心にしたポスト現代音楽のためのブログ


by ralatalk

オケコンに匹敵?

本日、大澤壽人のコンサートに行ってきました。

1.交響曲第2番(1934年)
2.さくらの声 ソプラノとオーケストラのための(1935年)
3.ピアノ協奏曲第2番(1935年)

※伊福部氏追悼ということで、コンサートの最初にシンフォニア・タプカーラ(だったですかね?)の第二楽章が演奏されました。

指揮:本名徹次
ピアノ:三輪郁
ソプラノ:腰越満美
オーケストラ・ニッポニカ

リミッターを外した大澤は、果たしてどんなものか?。プロコフィエフ、オネゲル級を期待していたのですが、初期メシアン、バルトークに肉薄するくらいのすごい作曲力で、想像を遥かに超えていました。
 特に交響曲第2番は、ずば抜けたセンスの良さ、楽器運用力、色彩、音楽の構成力はすごいものがあって、聴いていてほれぼれしました。これが、本当に戦争前の1934年の作品なのか、当時、この曲を聴いたイベールが絶賛したというのもよくわかります。

 オネゲルやルーセル等のフランス人の作曲した交響曲と比べても、その上を行くくらいの説得力は十分に持っていますね。
感心したのが、複雑な対位法を簡単に料理していること。オネゲルもかなりの対位法の名人ですけど、大澤の場合、これに加えて音色とリズムも対位法的に処理している点もすばらしいです。
 曲の細かいパッセージや動機が多層に処理されており、速く動いている時間と遅く動いている時間の両方が混在しており、これが微妙にシンクロしてくるという不思議な部分があります。こうした作曲法ができる人は、現在でもほとんどいないし、無理してやったとしても、どこかぎこちない習作という領域を超えないですが、大澤はモーツアルトのように自由にやっているという点でずば抜けていますね。
 
 個人的には、もしかしたらこの曲は、バルトークのオケコンに匹敵するくらいの名曲ではないかなあと考えております。これを確証するには、あと5つくらい別のオーケストラの演奏を聴いてみないとわかりませんですけどね。
かなりの難曲でしょうけど、演奏解釈の幅もかなりあるはずなので、いろいろなオーケストラで聴いてみたいですね。デュトアとかブーレーズとかでもし聴く事ができるのなら最高なんですけどね。

※オケコン的に各楽器に名人芸を要求する手法は、良く似ていますね。バイオリン独奏部分はかなりいけていました。でも、よく考えたらオケコンよりも前に作曲された作品なんですよね。

 さくらの方もショートピースとしてはすばらしい作品で、オーケトレーションも抜群で武満徹とかと比較できるくらいに斬新です。ただ歌は、日本語よりフランス語の方がよかったかなあと思いました。日本語だと子音が入ってこないのでリズムがのっぺりとしてしまうのですね。

 ピアノ協奏曲の方は、正直、よくわからなかったです。ぱっと聴いた感じでは、少し技術偏重型かなあと思いました。魅力という点では、ピアノ協奏曲3番の方がけっこう楽しませてくれるパッセージがあっておもしろかったのですけどね。
 しかし疑問点があって、どこかパート落ちしているのか、あるべきパッセージが出てこないというところがあって、何か足りないぞという感じで聴いてました。もう少しわかりやすい言葉でいうと、オケとピアノでピンポンしているはずなのに、ピンポン玉の行方がわからなくなるというところでしょうか。ジクソーパズル的な緻密な作曲をしているはずなので、そこのところの問題が楽譜にあるのか、演奏上の問題なのかわからないので、評価は保留といたします。

 ピアノ演奏は、エチュード的にがっちりと弾き過ぎていたのが気になりました。ジャズぽいリズム感とか軽さがあればもっとよかったように思います。ラヴェル先生のピアコンのようなノリでやってほしい気はしましたが、まあそこまで要求するのは酷というもんですね。初演かつ難曲ですからね。

 最後に、この難曲をよくやってくれましたいうことで、ニッポニカの皆様、三輪さん、腰越には本当に感謝です。このコンサートが新たな歴史の一歩になればと思っております。
by ralatalk | 2006-03-12 23:30 | コンサート