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クラシック音楽を中心にしたポスト現代音楽のためのブログ


by ralatalk

エネスコの音楽についての雑感

エネスコの一連の作品を聴いているのですけど、作品のバリエーションが豊富なので音楽の本質がどこにあるのかわからない状況ではありますが、音楽そのものは良心的で丁寧なつくり方をしていることがわかります。
 
 彼の代表作にルーマニア狂詩曲というオーケストラ曲が2曲ありますが、これはちょっと本来の作風から外れているような気がします。おそらくは特別な依頼があっての作品。シベリウスでいうフィンランディアのような作品なのかなあとも思いますけど、詳細は調べてみないとわからないです。





○エネスコの作風

 楽器法に特徴があり、割と息の長い旋律を演奏させ、それに対位法的、リズム的を絡める作り方。多楽章の曲では、楽章間の時間的バランス、対比/対象に気を使い、各楽章の連携を取るための循環主題を使っている作品が多いというのも特徴ですかね。この辺は、フランス生活が長いということでサンサーンス等の影響もあるのでしょうか。

旋律は、ルーマニア民謡からの引用に魅力があり、作品によっては、素材を活かすために平均律の音程にない微妙な音程を入れてきていますね。エネスコのバイオリン演奏も独特のポルタメントによって旋律の微妙な味付けを演出していますが、今となっては古い奏法。でも20世紀初頭の息吹を感じます。

オーケストレーションは、ワーグナー、Rシュトラウス、ブラームス、ドビュッシー等の和声法を取り入れていて、これにバッハ的対位法の要素も加えてという感じでまとめています。華麗さというよりは、渋みで聴かせるサウンドになっています。
こう書くとオネゲルに近い感じだなあと思う方もおられるかもしれませんが、オネゲルほどは、線的な音楽ではないですね。線的な度合いとしては、マーラーの方に近い気がします。
ただオーケストレーションは、努力によってうまくなったタイプで、少々個性に乏しい感じがします。マーラーやRシュトラウス、ストラヴィンスキー、ラヴェル先生のような独創的なオーケストレーション感覚というのはあまり見当たらないですね。
部分的にすごいことをやっている部分もありますけどね

音楽的には、丁寧なつくりは良いとして、「複雑性と単純性とのバランスが少々悪く、少々やり過ぎの部分が多い」ように思えます。
 このところのバランス感覚は、大事でバッハ、ベートーヴェン、ブラームスあたりが得意とするところで複雑性と単純性のバランスが絶妙な彼らの作品は、聴きやすいし深みもあります。また複雑性でのみで勝負するとなると、バルトークやシェーンベルクのように「俺様の偉大な作品が理解できないのはおまえたちの頭が悪いからだ!」みたいな強引なところがあってもぜんぜん良いと思うのですが、そこは控えめで人格者のエネスコは、予定調和を優先するところがあり、そのために押しが不足しているように感じてしまいます。終楽章ではとくにその感じがして「なんでジャーンで無理に終わらせる必要があるのか。練りに練って展開しまくった楽想の最後がこれかあ?」とも思うところがあるんですよね。
 逆に、ショスタコの場合だと、ジャーンとやってもものすごく説得力があるから不思議ですけどね。まあショスタコの場合、最後に狂ったようにジャーンとでもやっておかないと悲惨でいたたまれなくなるというのもありますが。バッハも最後に救済の和音で締め括る作品が多いですけど、エネスコの場合、暗い音楽ではないこともあってジャーン効果が生きないのでしょうね。
 
音楽的な味わいとしては、
特に後期の作品になると、何かをただ見つめてその行く末をただ暖かく見届けるというような音楽。自己主張がなく控えめ。そういう作風なので、ときどき
「もっともっと先へ行けば良いのに。なぜこんなところで後ろを振り返っているんだろう。」と、もどかしくなるようなところがありますが、こんな感じは、夏目漱石の小説の主人公と似たところもあって、どことなく古い時代の日本人の感覚とも共通しており、合理主義の西洋人らしからぬ部分も感じます。これがルーマニアの国民性なのかなあ。この点にエネスコの深みのエッセンスを感じます。

こういう渋い個性なので、オーケストラ曲よりは、室内楽の方に向いているように感じます。そして、バイオリンソナタ三番とともに最良な作品の一つがこの八重奏曲でしょう。(まだ聴いていない作品があるので判断は保留しますが。)

この八重奏曲は、エネスコの美点である旋律性と民族性、舞踊のリズム、音楽の深みがうまくブレンドされていて、聴きやすく、名曲の部類に入ると思います。ブラームスの後期室内楽に通じるものがありますけど、シェーンベルクの浄夜にも近いものを感じますね。
それにしてもルーマニアのCDは安いんですね。渋谷のタワーレコードにて、エネスコの管弦楽集は2400円(4枚組み)、この八重奏曲で680円。かなり得をしたような気がしました。
by ralatalk | 2005-12-19 12:56 | 音楽エッセイ