日本のアンコール曲
2008年 12月 08日
最近、バイオリンのコンサートには、ちょくちょく行っているのですけど、バイオリン協奏曲の場合のプログラムは大抵こんなパターンです。
- 前奏曲、序曲、小さい交響曲などの軽い曲
- バイオリン協奏曲
- ソリストのアンコール
- 交響曲などのメイン曲
- オケのアンコール(プロの定期演奏会ではない場合が多い)
ここで着目は、ソリストのアンコールなんですけど、バッハの無伴奏か、イザイの無伴奏が演奏されることが多いのです。ヒラリー・ハーンなどの海外ソリストの場合は、それでいいですけど、日本人のソリストの場合は、ここで日本の曲でチャレンジしてほしいところですね。
とはいえ、なかなかバッハやイザイに匹敵する曲はないのですね。現代音楽のバリバリの曲では疲れますしね。アンコールということではもっとリラックスした雰囲気の曲がほしいところです。愛唱歌との編曲ものが良いとおもっているのですが、パガニーニのカプリスみたいな、バイオリンの名人芸を楽しく堪能させるような編曲物は、見あたらず。今の作曲家でも、充分に作れると思っているのですが、依頼する人がいないと成り立たないのですね。
というテーマで久しぶりに銀座ヤマハ店にいってきたのですが、そのとき見つけてきたのが、この楽譜です。
「無伴奏ヴァイオリンのための愛唱歌39」
日本には世界に誇れるすばらしい歌があり、歌詞の意味が通じなくとも旋律の美しさに感動する外国人も多いということで、無伴奏バイオリンのために作ってみた曲集とのことです。
曲目としては、「夏の思い出」「ちいさな秋みつけた」とかありますし、「エーデルワイス」「大きな古時計」とか西洋のうたもあります。さっそく弾けるのか試演してみましたが、むちゃくちゃに難しい。たぶん、カイザーレベルでは駄目で、クロイツェルで重音の修行をしている人でないとシンドイですね。ちょっと初見は無理でしたが、重音の修行にはなるので、すこしずつ見ていこう思います。
この編曲、和声が充実していてとてもきれいなんですけど、少し違和感があります。音がバイオリンの曲にしては多いのですね。おそらくピアノで構想した音型を無伴奏バイオリンに移しているのかなあ。無伴奏バイオリンの曲の場合、単音の部分と重音の部分の対比に醍醐味があるのですが、始終重音だけで進行すると、重音演奏としてのありがたみが薄れる感じがします。あのバッハのシャンコンヌですら単音の部分が結構あります。
バッハの無伴奏チェロ組曲のように、省略の美学というか、鳴っていない音を鳴っているように見せかける技というのは、弦楽器を熟知していないとなかなか難しいものがあるのでしょうね。他にも単音だけでも、2つ以上の楽器が鳴っているように錯覚してしまう、無伴奏バイオリン・ソナタの3番のアレグロ・アッサイとかバッハの技術力には、ただ、ただ、驚愕するしかないですね。
とはいえ、盛りだくさんの楽曲があるし、選曲もよい曲集であることは、まちがいないところです。ヴィルトオーゾ的な要素を随所にいれてくれると、プロのアンコールで使える編曲になるのでしょうね。この曲集の進化形を聴いてみたい感じがしますね。