クラシック音楽を中心にしたポスト現代音楽のためのブログ


by ralatalk

オールド・フィニッシュ・トーン

 本日は、カルミニョーラの演奏会へ行ってきました。少し気になっていた客入りは何の心配もなし。弦の国の首都のクラ・ファーンが世界最高のバイオリニストを簡単に聴き逃すような事はあり得ないということなんですね。それにしても、カルミニョーラのカリスマ・パワーにはものすごいものがあり、舞台で演奏している姿に緑色の縁がついた黄色のオーラーが実際に見えました。まさに闘気の塊です。



さて、演奏の方ですけど、オール・ビバルディで問題ないのかという心配の声もあったのですけど、まったく問題なし。しかも演出が憎い。3曲目までは、カルミニョーラが登場せず、まったりとした演奏で、ある程度、不満が溜まってきたところで、4曲目でカルミニョーラが登場。何か檻から出された猛獣のような目で、
「おまえらなんちゅう、たるい演奏をしとんや! 本物のビバルディをきかせたらかい。」とオケ団員をぐるりと見て威圧。このマフィアのドンが来たみたいな感じがかっこがいい。役者です。

 緊張する団員。ピーンと空気が張り詰めたところで、「さあ、行くで〜」とぐるりとすばやく弓を縦方向に回してカルミニョーラの演奏が始まりました。やはりこの人のバイオリンの音は、別次元の音ですね。存在感が違います。

 カルミニョーラの演奏で感心するところは、決して安全運転をしようとしないところ。このため多少ミストーンも勢いあまって発生するのですけど、不思議なことにこの微妙なミストーンは、楽曲を追求した結果であるためか説得力というかリアリティがあるのです。例えるなら、天才外科医が、病巣に思い切ってぐいぐいとメスを入れていく感じ、あるいは、凄腕職人がノミでぐいぐいとバイオリンの裏板を粗削りしているような気がします。

 このミストーンは、音色作りにも大きく貢献していて、きっちりと合うときとそうでないときのコントラストがあり緊張感を持続させています。こうした思い切った演奏というのは、昔の大巨匠風であり、すごく人間味が出てきているのですよね。こうしたことは、コントールできるとは思えないので天性のものでしょうね。あるいはカルミニョーラには独特の音律が存在しているのかもしれません。

 すみません。ミストーンというと聴こえが悪いし、如何にも下手であるという印象も与えるので、これをバイオリンの製作技法にあやかり、オールド・フィニッシュ・トーンとでも呼んでおきますかね。キモはリズム感が完璧なこと。この土台がしっかりしているからこそ、オールド・フィニッシュ・トーンが生きてくるのだと思います。ここが単なる下手との違いです。
 
 他、バイオリンの音色が実に多彩。ビバルディの時代に、スル・ポンティチェロ、ホラ・スタッカート奏法があったのかは知りませんが、カルミニョーラは臆せずに演奏。パガニーニがビバルディの時代に降臨した。こんな感じです。こうしたことをやっているから、ビバルディの時代と現代の時代が妙につながり、ビバルディの曲が今できあがったばかりの新作のように錯覚をすることがあって面白いのですね。

 まさに巨匠風バイオリニストというか、他のソリストではもっていない音楽の吸引力があります。「昔のバイオリニストはよかったのに。。。」と嘆いておられる貴兄に、特にお薦めできる最高のソリストであります。

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●カルミニョーラ(メモ)
  • 足の開き方や動かし方が、独特。昔のパガニーニ風。
    勢いあまって強く床を打ち付けてしまう癖があるようです。

  • 弓はバロック弓だが、持つ位置がかなり先。

  • 手首がかなり柔らかい。信じられないような超高速スタッカートを自由自在操ることができる。

  • 音のアタックが極めて速い。おそらく現役ソリストのなかでトップ。
    ガット弦なのにどうして?という感じです。

  • CDで聴くと音がかなり硬いように聴こえますが、実際は柔らかい。バッシとアタックは出すが、スーッと音が抜けます。

  • 奏法と音色バリエーションが豊富。これと比較できるのはマンゼくらい。でもマンゼの豊富さとカルミニョーラではぜんぜん違うので、バイオリンの奥の深さを感じます。

  • バロック・バイオリンとは思えない音量。ストラディバリウスの“バイヨン”の威力なのかもしれません。

  • カルミニョーラはかなりタフ。まさか5曲もアンコールを演奏とは!!
     
  • 舞台では厳しい感じでしたが、サイン会ではかなり柔らかでやさしい人柄。
    女性にもてるのでしょうね。


●ヴェニス・バロック・オーケストラ(メモ)

  • 今回はもちろん裸ガット弦での演奏。ガット弦の特有の柔らかでふくよかな音がする。

  • チューニングするのに、第一バイオリン奏者が一人一人のところへわざわざ行ってチューニングしていたのが印象的。チューニング中は、他の奏者は音を出さないところが好印象。バロック流?あるいはヴェネチア流?。

  • バイオリンとヴィオラは立って演奏していた。この方が少人数のときは音量が増すので良いことだと思います。

  • 指揮者はいないが、全体のテンポ・コントロールは、第一バイオリン主席と第二バイオリン主席、それとチェンバロでとっているようだった。もちろんカルミニョーラがいる場合は、彼に任される。

  • 指揮者がいないので、カルミニョーラが指揮をとりますが、そのとき一回、弓をぐるっとすばやく回した後にみんなと合わせるのですね。その動き、歌舞伎役者みたいでとてもユーモラス。

  • コントラバスは、実はガンバ?6弦で、フレットが敷いてありました。

  • リュートの音が意外に良く通る。やはりビバルディにリュートは不可欠ですね。
    リュート奏者はかなりの腕なのだと思いました。

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by ralatalk | 2008-11-06 23:41 | コンサート