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クラシック音楽を中心にしたポスト現代音楽のためのブログ


by ralatalk

第85回 弓の極意

本日のレッスンの終了時に、これをみてくれませんかということで、バッハのBWV1012のガボットのバイオリン編曲版を美探先生に手渡すと、これはおもしろいということで、先生は楽譜をみるなり初見でばりばりと弾いていきます。初見でここまで弾き切るとは、さすがに先生です。凛としたバッハ。重音が入るとさすがにかっこいいです。




「これはいったいどうしたのか?」と尋ねられたので、
「チェロのベーレンライター版からバイオリン曲に1オクターブ高くした楽譜です。」と回答。
「原調?」
「はい。この曲の場合は、ほとんど変更することがなくバイオリンの楽譜になります。」
「なるほど。弟子に教えられるとは。他、1番のプレリュードはやってみた?」
「作成済みですが、1番のプレリュードは、5度高く移調せねばならず、曲の雰囲気が損なわれます。」
「なるほど。おもしろい。次回、それもって来てください。それにしても、この編曲で重音が多くなるが、すごく勉強になるなあ。」
ということで、美探先生はとてもご満悦。チェロ組曲のバイオリン版は、海外の複数の出版社で出ていますが、ロマン派のボーイングなので、気にくわない。やっぱり、歴史的な検証結果を取り入れたベーレンライター版にこだわりたいところです。

本日のレッスンのメニューです。

  1. 運弓の基礎
     今回は、弓の極意を授けてくれました。でもこの極意はA難度。『弦と弓を一定の空間(1cmくらい)あけてボーイング』するというもので、非常に難しい技。でもプロならかならずできると技らしいのですが、どうしても弦にあたってしまいますし、ましてや一定の間隔でアップ、ダウンを繰り返すなど無理。でも美探先生はこれができるのです。美探先生曰く、
    「宮本武蔵は、刀がなくても相手を倒すことを常に考えていた。バイオリン弾きもそのようなものだ。弓がなくても音を出す。」
    「!」(絶句)

  2. 指弓の基礎
     とにかく指弓は、ゆっくり、指だけに集中して弾く事。速く弾こうとするといい加減になったり、他の部位を使って弾いてしまう。元弓、先弓、中弓どの部分においても使えるように。意識しての指弓ではなく無意識に指弓ができるようにすること。

  3. ビブラートの基礎
     幅広くゆったりとしたビブラートをこころがける。そうするには、ネックと左手の間には充分な間隔が必要。親指は必要以上に出さないこと。手首は寝かすのではなく立てること。

  4. 音階練習(小野アンナ)
     As-Durの音階と分散和音。
    「いかんなあ。左手の動きが鈍い。音階だけでは駄目か?。次回からはセブシックをやることにするので、1ページ目を見てくること。」

  5. カイザー24番
     「指弓が抜ける箇所がある。ゆっくりと確実に弾く事。そのために最初はスタッカートで指弓だけで弾く事だ。」

  6. バッハ:ガボット(無伴奏チェロ組曲BWV1012より)

    「バッハ。ベートーヴェンもそうだが、古典をやるときは、とにかくアタックだ。(音量を)楔形で弾く事。アタックで力を入れたらら、すっと力を抜くこと。」

    「たぶん、あなたはこの曲のイメージが頭の中でできているのだろうが、イメージをつくるその前の段階で手を抜いている。こうした曲を知らない人は、まじめに楽譜を読んできっちりと弾こうする段階があるが、あなたにはそれがない。一音一音丁寧に、心をこめてひくこと。そうすれば正確なアーティキュレーションで演奏できるはずだ。」

    「私は、あなたがあなた流でうまく弾けたときのイメージを持っている。芸術には、誰かに教わったことをそのまま鵜呑みにしていては駄目な部分がある。自分の音楽を作れ。私は、それを手助けしているだけに過ぎない。」


本日はいろいろと良いことを教わったレッスンでした。
by ralatalk | 2008-08-24 00:41 | パガニーニへの道