マンゼに学ぶ最新バッハ事情 その5
2008年 08月 18日
マンゼのおかげでバッハに開眼した私としては、鈴木教本のBWV1012のガボットの楽譜にかなり疑問あり。こんなアーティキュレーションではバッハとは言えない。教育用の意図はわかるのですが、ゆとり教育を受けさせられている感じで手加減されまくっているのがどうも納得いきません。とくにガボットIIに出てくるリズムの重音が省略されていると楽曲がバッハではなくバッカに聴こえます。ゆとり反対。真実を追求すべし。小学校オケが春祭や武満をやる時代に、これはあり得ないだろうということでヤマハ池袋店へ直行。
バッハの無伴奏チェロ組曲の楽譜はいろいろな出版社から出ているのですが、買ってきたのはご存知これ。
「ものども、ひかえ、ひかえ。ここにおわします青い楽譜をどなたと心得る。これこそは天下のご意見番、クラ界の最高権威、『ベーレンライター様』でござりますですぞ、頭が高い。ひかえおろう。」
ということですが、ここで思わずひれ伏してしまうのは、私のようなクラヲタ君や楽譜マニアだけのようです。
確かに最近のクラ界は、『ベーレンライター版』でなければ楽譜にあらずという勢いなんですけど、オケや演奏者がこれを忠実に守って演奏しているかとなると、そうでは無いようで、適度にアレンジして演奏しているようです。今までの歴史と伝統があるので、学者さんがこれが正しいと言っても、受け入れがたいところも多々あるようですね。巻末の注釈を細かく見ながら使うというのが、正しい使い方のようです。
もちろん、最新の研究成果が盛り込まれている楽譜なので、無伴奏チェロ組曲のようなバッハの直筆譜が紛失しまっている作品では、貴重な資料です。ちなみに無伴奏チェロ組曲の楽譜の最大の問題点は、妻アンナが書いた写譜のアーティキュレーションの不一致が多いことで、世界中のチェリストが悩んでいるところなんですね。ベーレンライター版でもいたるところに点線スラーが付記されています。
このところは、鈴木さんの著作「古楽器よ、さらば」に詳しく書いてあるので、ご興味のある方はどうぞ。とても勉強になります。
で、鈴木教本とベーレンライター版を比べてみたのですが、やっぱり私の直感は正しかったということを認識しました。鈴木教本のアーティキュレーションの付け方はロマン派のものでバッハ時代のものではないのですね。ゆとられていては人間駄目になる。厳しいなかにも、清く正しいバッハを演奏したいので、省略されている和音も含めて演奏したいと思います。
BWV1012については、もともとピッコロ・チェロ、もしくはヴィオロンチェロ・ダ・スパッラを想定して書かれているために音域が高く、そのためバイオリンで弾いてもそれほど違和感がないのですね。それに移調せずとも原調で弾けるのも魅力。バイオリンの最低音であるGより低いDが出てくる箇所が数点あるのですが、全体の楽曲にそれほど影響を与える音ではないので、その部分は省略して弾いても大きな問題はないと思っています。以下がバイオリン用に編曲した楽譜。弾いてみると、難しい箇所が増えますけど、重音のある方がバッハらしいし、深みもでる。次のレッスンでは提案してみますかね。