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クラシック音楽を中心にしたポスト現代音楽のためのブログ


by ralatalk

マンゼに学ぶ最新バッハ事情 その4

バッハと言えば、今まではリヒターを中心に聴いていたのですが、最新の研究に裏打ちされたマンゼの演奏を聴いた後で、リヒターのCDをかたっぱしから聴いてみると、バッハ研究が相当、進化とともに深化しているという事実を悟り、愕然。リヒターのバッハは、ロマン派を継承しているバッハであり、バッハ時代の演奏とはかなり様相が違うということを明確に理解しました。
 私のバッハ理解は100年も遅れてしまっている。もっと深く真のバッハ像にせまらなくてはと反省し、次のレッスンの曲である無伴奏チェロ組曲第6番のガボットの準備を整えるのにあたり、モダン楽器と古楽器による最新の演奏と古い演奏を徹底的に聴き比べることにしました。




 まずは鈴木教本についてくるCDなんですが、教育用なので仕方ないにしても魂の抜けた演奏なのでお話しになりません。でヨーヨー・マの若い時代の無伴奏チェロ組曲を取り出して聴いてみたのですが、テンポが早過ぎ。コンクールの審査員が喜ぶような完璧さだけを目指すだけの単純な演奏。最近のヨーヨー・マの演奏は聴いているので、ずいぶんと彼も深化したものだと逆に感心。若いヨーヨー・マと今のヨーヨー・マの音楽の演奏方法の変遷が、そのままバッハ研究の成果になっているのですね。

それでもやはりバッハ演奏としては大いに疑念ありなので、やはり、ここは、初心にもどりいろいろな有名、無名にかかわらず、演奏を聴いてやろうと意気込み、ナクソスのミュージック・ライブラリーへ。
それにしても随分とあるものです。無伴奏チェロ組曲で検索するとあまりにも多くでてくるので、「チェロ組曲第6番 」で絞り込む。

チェロだけでなく、ビオラ編曲版、ギター編曲版、フルート版もでてくるのがおもしろいところ。ビオラ編曲版に関しては、バイオリンで弾く場合の参考になるかもと聴いてみたのですが、違和感が大きく、やはりオリジナルでないとということで、チェロ版で比較。チェロ版といっても、モダン・チェロ、バロック・チェロ、ピッチも415Hzから442まで様々。
それにしても、ガボットという1曲をとってもその表現は、あまりにも様々。バッハの懐の深さを感じます。参考になる演奏は、以下の4つでした。

ルーディン(Alexander Rudin)
ゆったりと粘りのある演奏でかなり丁寧な音作り。強弱を細かくコントロールしているところが好印象。レッスンには、最も参考になりそうな演奏。

ユリウス・ベルガー
豪快なバッハ演奏なのに、なぜかしっとりと感動的。深い低音の魅力。この人の演奏を聴いているとなぜか涙がでそうになりました。音楽を越えた何かを持っている感じがします。

マリア・クリーゲル
テンポを大胆にゆらせている点と、冒頭の重音の弾き方に個性あり。なんか長髭を手入れしながら歩いているようなおもしろい演奏。あまりにおもしろいので他の組曲も聴いてみたのですが、いわゆる天才肌の演奏ですね。

カザルス
さすがに御大ははずせない。明るい音色で気品が高い巨匠ならではの貫録。

さすがに20人以上の演奏を聴いていると疲れました。それでもこの世界は、広くて深い。全世界マニア教会からエバンジェリストとして派遣されているようなキング・オブ・コレクターの人もおられるだろうと検索してみたところ、やっぱりおられましたね。

以下です。

バッハ: 無伴奏チェロ組曲
(最終更新日2008/07/10) 所有261枚中 (済120/未141)
⇒すごい数。未?って、おいおい。おそるべきコレクターでいらっしゃる。

私の感想と比較してみると、ユリウス・ベルガーの評価が高い。やはりわかる人(マニア)にはわかるのですね。それにしても、名盤とか言って、音楽評論家の推薦するものしか聴いていないようだと、演奏家によるバッハ演奏の進化にはまったくついてこれないのですね。おそるべきバッハ。今なお最先端の音楽です。
by ralatalk | 2008-08-03 17:02 | 音楽エッセイ