クラシック音楽を中心にしたポスト現代音楽のためのブログ


by ralatalk

その演出は、私の良心のように真っ黒

今回のコンサートは、とても期待していたので、その落差に愕然。熱が出てきました。この文書には、あいにく賛辞はありません。演奏が良かったと思っている人は、続きはお読みにならない方が良いかと思います。

5月5日
ショスタコーヴィチ作曲
「ムツェンスク郡のマクベス夫人」
2008年5月4・5日 14時開演
サンパール荒川大ホール

指揮    珠川秀夫
演出    大島尚志
東京歌劇団管弦楽団
東京歌劇団合唱団
カテリーナ :  黒木真弓
ボリス:岸本力
セルゲイ:角田和弘
ジノーヴィー:岡本泰寛




まず、オケですけど、中低域の音程がぼろぼろで、ハーモニーが不安定になる箇所が結構ありました。ビオラ、チェロが特に悪く、これだと金管楽器が音程を合わせるのにかなり苦労したと思います。木管は比較的がんばっていまして、クラリネットなどはいいフレーズで演奏していたように思います。たぶん、オケピットでの経験があまりない団員が多いのではと思いました。
 オケが悪くてもオペラですから、歌手陣と演出でがんばれば、それなりに楽しむことはできるのですが、肝心の演出が、こんな演出はないでしょうの学芸会レベル状態。

特にセルゲイがカテリーナを強姦する場面で、バレーダンサー4人が花をまきながら踊るとはどういう了見なのかと。ここはちびまる子ちゃんではないんですよと、あきれ果ててしまいました。それにせっかくショスタコが極悪の音楽をつけてくれているのに、花ですか?

亡霊が出てくるシーンもおばけのQちゃん状態だし、プロの演出家の仕事とはとても思えない。世界トップレベルの演出研究くらいしっかりやってくださいという感じです。お金をかけなくても、もっとすばらしい表現はいくらでもできるでしょう。

 最後の場面でも、湖にカテリーナが恋敵を崖から突き落とし、自分も飛び込んで死んだことをあらわすために、花が舞台からせりあがってライトアップされる演歌っぽいクサイ演出など、交通事故死したわけでもあるまいに、おいおいという感じです。しかも、ここは極寒のシベリアでしょう。ここが一番、違和感がありました。そもそもショスタコは、このような死生観ではなく、「死んだらすべてが終わり。だからこそより良く生きよ。」というのが全作品にあるメッセージのはず。私はカテリーナの人生をロシア国民への戒めと考えているので、このエンディングはおかしいと思いました。

 このオペラは、悪と悪と悪のぶつかり合いがキモですし、目を背けたくなる場面も多いのですが、それをきっちりと表現していかないと、人間の深層にある真実が浮かび上がってこない。しかも、それを音楽が、凶悪にサポートとしているので、舞台演出がヌルイいと音楽だけが完全に浮き上がってしまうことになります。ゆえにセックスシーンなんかも裸でやるくらいの覚悟がないと、このオペラのすごさが浮き上がってこない。

過激なシーンが多くて困ってしまう。わかります。だから、演出家はすごく考えなければならないし、ここでぎりぎりの勝負することに芸術の価値があるのに、勝負しないで逃げてばかりいるようでは、この作品をやる意味がありません。
 
そういう意味で、今回この作品にがっかりした人は、ヤンソンス/ロイヤル・コンセルトヘボウのDVDを購入して見てもらえば、あまりの表現力の差に愕然とされることでしょう。芸術とはかくあるべきものです。

 それにしても、こんな演出されたのでは、次が心配です。映画とかアニメに負けない斬新な演出で、若杉さん頼みますよ。日本オペラ界の意地と底力をみせてやってください。歌手陣は、なれないロシア語で大変だったのでしょうが、力演していたのが唯一の救いでしたから、一応明日にはつながっていると思います。
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by ralatalk | 2008-05-05 19:26 | コンサート