クラシック音楽を中心にしたポスト現代音楽のためのブログ


by ralatalk

誰がために鐘は鳴る

今年、最初のコンサートは、武満からと思っていたのですけど、おっと、こんなところを見落としていました。

第467回 読売交響楽団定期演奏会
バルトーク:ピアノ協奏曲第3番、
ショスタコーヴィチ:交響曲第11番「1905年」
指揮:ヒュー・ウルフ 独奏:アンティ・シーララ(ピアノ)

ミッチーの演奏会を聴いてからショスタコ禁断症候群に悩む私としては、当日のチケットを手に入れるべく、いざ「サントリーホール」へ出陣。

久しぶりのサントリーホール。改装されて今回初めてです。それにしても良く響き過ぎる残響は、まったくそのままどころか、残響がより長くなったような気もします。おば様達のあめ玉の包みをあける音まで良く通ります。困ったものです。それにしてもおば様達。のど飴は演奏前に召し上がってくださいね。



 さて演目の1番目はバルトークから。この曲も結構、生で聴いているのですけど、なかなか良い演奏ってないですね。バルトークに関しては、CDで聴く方が良いかもです。

 今回の演奏、2楽章は、このよく響くホールの残響をうまく使ってよかったのですけど、1,3楽章がね。。。。ショパンチックなロマントークでがっかり。ピアニストはペダル使い過ぎて、せっかくのリズムがベトベトなベタトーク。オケもなんか疲れているのか精気がありません。先生からは「全弓で弾いているの?」とか注意されそうな演奏。おまけに指揮者は松葉杖だし。シー・ウルフなんていう潜水艦の艦長のようなカッチョ良い名前なのに、まさか沈んだままじゃないでしょうね。おっと違ったヒュー・ウルフさんですね。

 アンコール曲は、ショパンの何かでしたかね、忘れました。ショパンはうまかったです。

 これで前半終了。まあ、長年の経験からすると「スカ演の後に名演あり」という「ことわざ」もありますから、ここは落ち着いて、本命を待つとしますか。後半が始まるまで、舞台の席の準備をじっくり見守っていました。
 ここで意外な発見。ハープは2台しかないじゃないですか?ミッチーは3台置いていたんですけど。それと弦セクションが一回り小さいし。これで強力な打楽器軍団や金管軍団に勝てるのか、少しどきどき。「艦長、秘策はあるんでしょうか?」

 さて後半、待望のショスタコ11番。

出だし、なかなか良し。落ち着いているし、細かい表情付けもあって彫りが深い。11番の場合、強力な2楽章と4楽章があるので、1楽章と3楽章の役割がとても重要なんですよね。それがわかっているかのような丁寧な音作り。よく研究してますこと。
 ラッパが鳴って、小太鼓が打ち鳴らされ、いよいよ2楽章へ突入。曲がどんどんと暗黒の世界に落ちていきます。ここでも感心したのが決して狂気に惑わされず、ひたすらに音を細かく制御していきます。エンジンブレーキを細かくかけて坂道をいくような演奏。この扱い方というのは、ショスタコというよりもマーラーの演奏しているかのような感じがしました。
 そして、曲は渾沌の渦へ。徐々に速度を上げていっています。ダイナミックスも正確に計算されているかのよう。そして、阿鼻叫喚の血の惨劇へ突入。このやり方でいくのならミッチーのように瞬殺路線かと思いきや、ここで少しテンポをゆるめての演奏。アンサンブルはきれいに整ったままfffの大行進。名フィルのときは、ミッチーが急速に加速したこともあって、大崩壊をまねき、かえって曲のすごみが出てよかったと思ったのですけど、そんな崩壊は許さじとオケもふんばっておりました。

いすれの演奏にせよ、ここはいつ聴いても背筋がぞっとするところですね。

 そして3楽章。ここがこの曲のキモです。詠嘆の歌をビオラに長々と弾かせ、そのあとで第2バイオリンが続き、少し明るい曲調で第1バイオリンが入ってくるオーケストレーションはさすがショスタコ。絶望的にうまいです。日比谷公会堂で聴いたビオラの歌は如何にも焼け野原でのしなびた歌という感じがしたのですけど、サントリーホールで聴くビオラの歌は焼け残った教会で聴くような感じ。とにかく余韻が美しい。とくにオクターブで重ねているオーケストレーションのところが、きれいに合ってオルガンのように響く。これはこのホールならでわのところですね。

 第四楽章。ここは、とにかく力のかぎりがんばる。特にチェロなんかは、ショスタカートのところで、弓をばしばし鳴らしていましたから気合いを感じます。ラストのコーラングレの歌もこのホールいっぱいに良く響いておりました。そして、鐘、鐘、鐘です。今回、秀逸だったのが、お客さん。この最後が鐘の音がすべて消えゆくまで静かに見守っていたところ。おもわず、私は、そこに何か神聖なものがいるかのようにサントリーホールの天井を見上げてしまいました。実に美しい余韻。そのひととき。

 今回、読響は、この曲にすべてをかけていたのですね。弦楽器セクションもこの人数で、これだけの音量を出せるとは、国内オケでも随一のパワーですね。それとトランペットがとても強く通る音で秀逸。ホルン、トロンボーン、チューバのアンサンブルもみごと。ヨーロッパ的な音作り方ですね。感心しました。打楽器は、その分かなり控えて演奏していましたが、これもアンサンブル的にはナイス。木管もこのホールの特性を良くいかした演奏でグット。
 きっと、他のオケ演奏に負けてはならずと研究していたのですかね。努力の後が見える好演でした。ムラヴィンやコンドラシンのような狂気を含む演奏ではなかったですが、今風のショスタコ演奏としてはよい演奏だったと思います。

 この11番に関しては、他のオケでも取り上げる機会が急速に増えてきておりますが、狂気と理性のバランスの取り方が難しいですね。あまり理性的にやると、戦争スペクタル音楽に成り下がってしまうし、狂気一辺倒では、古い解釈のままで進歩がないし。これからスタンダードな名曲になっていくには、いろいろと含みというか奥深さもほしいところですが、演奏解釈が明快過ぎるというのも弱点かもしれませんね。これは8番も同じことが言えるかもしれませんが。

ということで、今年は何回かこの曲を聴きにいくことになりそうです。
[PR]
by ralatalk | 2008-01-15 23:56 | コンサート