クラシック音楽を中心にしたポスト現代音楽のためのブログ


by ralatalk

我思う、ゆえに我在りな演奏

 ショスタコの4番を聴いてきました。演奏は、東京フィルハーモニー交響楽団。指揮はご存知、井上道義です。

 ショスタコの4番と言えば、マーラーの交響曲第7番と双璧のクラシック音楽のなかで最も複雑怪奇な音楽。オーケストラのあらゆる機能を全部盛りにしたまさにマニアのための交響曲であります。それゆえに1回聴いただけでは、内容が理解できるようなものではないのですが、何回も聴いていくうちのその良さがわかってくる『我思う、ゆえに我在り』な味わい深い作品でもあります。




 私もショスタコの交響曲の中で最もよく聴き込んでいるのがこの4番です。この4番には、若きショスタコのやりたかったことがすべて詰まっているため、ものすごく聴きごたえがある作品なので、それゆえに最高傑作と呼ぶ人もいます。

 ショスタコの場合、どの作品が最高傑作なのか、その時代時代で全力で作曲されているため判断が難しいところですが、私は、4、8、13、14の4曲のうちのどれかだと思っています。4番の良さは、あまり政治的な影響や戦争の影響を受けている曲ではないので、純粋なシンフォニーとして聴くことができる点と、飽きのこない複雑な構成をしているため、何回聴いても、新しい発見があることです。
 そして、今回、初ライブで聴いて、新たな発見があるかどうか。CDでの違いは、ということで興味をもって日比谷に行ってまいりました。

ホールには、30分前に行ってステージをチェック。この曲は、ショスタコ中、最大規模を誇り、ティンパニは複数の奏者で8台、多種多様な打楽器、ハープ2台を使うために、必然的に弦楽器の数も増やしており、ステージは艦載機が満載の航空母艦という感じでした。特筆は、いつもはオケの左奥にあるチェレスタを、ステージに載り切れないためか、第一バイオリンの後ろに持って来ていることで、怪我の功名というやつですかね、これによってすごくチェレスタパートの重要性というのが良くわかってよかったです。

 演奏に先立ち、ミッチーのプレトークがありました。ロックシンガーの誰だか忘れましたが、ご老人との掛け合いトークがありました。ミッチーは、この曲を最もロック、あるいはジャズぽいエネルギーに満ちた曲というようなことを語っておりました。

 さて、第一楽章がはじまりました。ミッチーのことだから少し変わった演奏をするのだと思っていましたが、テンポはスタンダードな演奏。打楽器によるメリハリを強調する演奏でした。
 特に気がついたことは、弦のボーイングがダウン、ダウンで演奏する部分がとても多いのでぎこちなく何か異様な感じでした。もちろんこれは作曲者の意図ではありますが。この刻み方が、他の曲では出てこない独特なものです。
 聴きどころは、蜂の大群の来襲のような超高速フーガからグロテスク極まりない姿で冒頭のマーチ主題が戻ってくるところで、さすがにこの部分はエグすごいですね。
 ということであっという間に終わってしまったという感じです。
 
 第二楽章の聴きどころは、最後のチャカポコですが、この部分はチェロ協奏曲第二番、交響曲15番の最終楽章でも出てくるショスタコのメッセージとも感じられる部分。この部分を割りと明るめな音色で演奏していたのが印象的。

 第三楽章は、聴きどころが多いのですが、出だしのカッコウとか鳥の鳴き声や虫の鳴き声が聞える部分。やはりこうしたところは、CDで聴くよりも生で聴くほうがリアリティがありますね。東京フィルハーモニーの木管楽器群はアンサンブルとして良くまとまっていて、聴きやすかったです。特にフルートの音色。味わい深かったです。
 最後のダブルティンパニの連打からはじまる大火山の噴火の部分は、ホール全体が地震にあったように揺れていましたが、これはダブルティンパニの効果がてきめんなんですけど、さらにバスドラム奏者には驚きました。サンクトペテルブルク響のような響きを出していたのですが、見てみるとかよわき女性奏者。この人、細腕で巨大バチを持って渾身の一撃を見舞っていてその衝撃で後ずさりしていたところ。バチ置き場には、山ほどのバチが置かれており、曲の状況に合わせて使い分けしていたのでしょう。ショスタコサウンドにベストマッチ。この曲にかける執念というかこだわり。プロ意識の高さにはほれぼれしました。
 曲の最後。大噴火の島から船で命がけで脱出して、遠くから見ている感じのする部分なんですけど、美しい。そしてチェレスタの音が妖しい。チェレスタをこの場所に置いている効果が抜群でした。
 残念なのが、静かに終わるはずだったのに、フライング拍手をするお馬鹿な人がいたこと。何であと3秒ががまんできないのか、まわりの人も思わず、シーと注意しているのに我を忘れて拍手を続けているし、恥を知れという感じでしたね。
と、少し後味の悪くなってしまった演奏会でした。

 全体的にすこし気になったことは、曲がこれだけ複雑だと仕方がないのかも知れませんが、どこにポイントをおいて演奏すべきなのかが、見えていないというか、アーティキュレーションが、弦楽器、木管楽器、金管楽器のパート間で統一されておらず、ゲネプロでの練習不足が露呈していたこと。
 モチベーションの高い楽員とそうでない楽員のギャップが激しく、これがアンサンブルの乱れを生じてさせており、まあ悪く言えば、熱々のご飯のなかにひやご飯が混ざっているかのような違和感があったこと。
 特にセカンドバイオリン主席は、熱くなる気持ちはとてもわかるんですけど、ファーストバイオリンと競う形で演奏していたのがどうかと。もう少し自分のパートを含め全体のアンサンブルのことを考えて演奏してほしい気がしました。おかげでセカンドパートがどういう音型を演奏しているのか良くわかってマニアック的な興味からはよかったと言えなくもありませんが。

 このような過密日程でこの難曲を仕上げるのは、かなりしんどいとは思うので、次にこの曲をやるときは、もう少し細かいところにこだわった演奏をしてもらいたいものですね。
 とは言え、随分と勉強させてもらったグット・バットな味わい深い演奏会でありました。
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by ralatalk | 2007-12-02 03:50 | コンサート