クラシック音楽を中心にしたポスト現代音楽のためのブログ


by ralatalk

ショスタコーヴィチ:バイオリン協奏曲第1番(その1)

クラシック音楽の数あるバイオリン協奏曲のなかで一番演奏が難しいと、個人的に考えているのがショスタコーヴィチのバイオリン協奏曲第1番です。

難しいと思えるのは、その技法もさることながら、音楽的内容の濃密さにあって、バイオリン協奏曲というよりは、むしろ交響曲に近く、4つの楽章がすべて違う雰囲気でできあがっているので、まとめ方がとても難しい。
 しかもそのまとめ方が、指揮者よりもソリストに強く求められるという点が難しいところであります。
 それゆえに、この曲に関しては、決定盤というのが、マニアの間でも割れているように思います。オイストラフが良いという人もいれば、ヒラリーハーンという人もいるでしょう。聴く人の立場によって、それぞれ傾向がかなり違いますからね。




 個人的には、ヒラリー・ハーンの演奏は結構、才気にあふれ良いところが多いと思ってはいますが、この曲の深層を掘り起こすには、それでも何か足らないような気がします。

で、少し気になっている若手バイオリニストの美歩・シュタインバッハーの演奏で聴いてみることにしました。

 私の場合、若手音楽家を評価する場合の基準は、未知なる曲へのチャレンジ精神とか情熱がどれだけあるかであって、演奏のうまい下手は気にしないことにしています。演奏は年齢を加えていけば、良くなるであろうし、今の状態で巨匠と比べるのは、ハンディがあり過ぎるからです。

それにあまりうま過ぎる演奏というのは、作品の味を無くしてしまう場合もあるので、個人的には、パールマンとかクレメルはあまり好きではないですね。とはいえ、ハイフェッツは別格ですが。

 さて、今回の聴いてみることにした美歩・シュタインバッハですが、この人の場合は、ミヨーのバイオリン協奏曲の演奏がチャレンジナブルな精神がとてもよかったので、この難曲をどう調理するのか聴いてみたいと思ったのです。

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ショスタコーヴィチ: 
ヴァイオリン協奏曲第1番 op.99 ←この作品番号を付けるとマニアが怒りまちゅよ。
ヴァイオリン協奏曲第2番 op.129
アラベラ・美歩・シュタインバッハー(Vn)
バイエルン放送交響楽団
アンドリス・ネルソンス(指揮)
録音:2006年5月 ⇒録音はとても優秀です

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↑かなり高い位置でささえる独特なバイオリンの構え方ですね。あごあては特注ですかね。

 さて聴いてみた感想は、やはりこの曲の表現は難しく、シュタインバッハの技術をもって演奏したとしても、届いていない。他のバイオリニストでも言えることなんですけど、この曲に関しては、技術的に完璧弾こうとすればする程、その本質から遠ざかるような気がするのです。多少荒いくらいにして、情念でもっていくという感覚も大事なのかもしれません。

 とくに、第二楽章のスケルツォ。かなりおどけた楽章なんですけど、多少、テンポとか、リズムをルーズにしておく方が味がでると思うし、強弱の差をオーバに付けていた方が、ショスタコらしい演奏なのかも。美歩さんの場合は、まじめに演奏しすぎですかね。ヒラリーハーンの場合だと、彼女のもつ天性の音楽センスで躍動感を付けていますが、たぶん私の感なんですが、美歩さんの場合は、ショスタコの交響曲をあまり聴いていないような気がします。なんかバルトークやストラヴィンスキーのコンチェルトを弾いているような感じです。
※この曲の場合、交響曲の10番、8番、弦楽四重奏曲の第8番を演奏にさいして調べておく必要がたぶんあります。ショスタコの場合、自作の引用も結構でてくるのがいやらしいところです。こんなことより重要なのは以下ですね。
ショスタコでは笑いやユーモアがとても大事。たとえそれが強制された歓喜であっても。たまに深刻な部分で、ふと意表をつくパロディが出てきたり、どんちゃん騒ぎになったりするところがあるのですが、こうした部分は軽く弾き流すというゆとりもほしいですね。交響曲の9番とか15番あたりの感覚の方が必要かな。それとゴシゴシした音だけでなく、柔らかく、優しい音も必要ですね。


 逆に第三楽章は、結構よい感じで、叙情的に弾けていますが、欲を言えば、音色の変化と音量の幅をもう少し大きくコントロールできれば、さらに良いのではないかと。

 第四楽章は、第二楽章と傾向が同じなので、似たような感想ですね。ショスタコの場合、他の作曲家と違って、強弱のメリハリの付け方、音色変化の幅を極端にかけていく必要があると思うのですが、このところも、計算しすぎると、空振りに終わるところがあるので、演奏も難しいところですね。狂気と理性のバランスの付け方は、その瞬間で付けていく本能も必要というところですか。

 他、第2番の協奏曲もこのCDには入っていますが、演奏はこちらの方が断然良いですね。第2番の場合は、打楽器が活躍したりして、オーケストラが、ソリストをショスタコの世界に引っ張り込むことが可能なのですが、第1番の場合は、ソリストがみずからその世界を創造して、それにオケを引き込まないとといけないという難しがありますね。
 
 いずれにしてもこの第1番に関しては、決定盤はなし。オイストラフの演奏はすごいのですが、録音が古くなっていますからね。もしシゲティの演奏があるのなら聴いてみたい気はしていますが、これはおそらくないでしょう。

 それとここだけの話ですが、最大級に大変なのは、実は、猛者マニアたちなのかもしれません。ショスタコと言えば、クラ界でも史上最強の猛者マニアが集いし、巣窟なので、こうした人たちを啓蒙するソリストたちやマエストロたちも大変ですね。
 中途半端な演奏解釈では許されん。これくらいは読んで、演奏会に挑めということなんですかね。

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↑ 猛者マニアのための書。同志諸君のためのバイブルです。
しかしまあ、ここまで気合いを入れて書くとは、さすがに猛者マニア。読んでその熱さに感動しました。
マニアの合言葉は、「コンプリート(全曲制覇)」ですかね。
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by ralatalk | 2007-09-18 00:18 | バイオリン協奏曲