クラシック音楽を中心にしたポスト現代音楽のためのブログ


by ralatalk

深井史郎作品展 感想

本日、深井史郎の作品展へ行って来ました。
曲目は以下の通り。

オーケストラ・ニッポニカ第11回演奏会
「深井史郎 作品展」 生誕100年記念
2007年3月25日(日)14時30分開演 東京・紀尾井ホール

1.パロディ的な四楽章
2.十三の奏者のためのディヴェルティスマン
3.平和への祈り

いつもながらオーケストラ・ニッポニカのプログラム冊子に書かれている内容はすごい。音楽資料として十分と使えるレベルです。大抵のプログラム冊子は、どこかの有名な音楽辞典からほとんど流用して書かれているのですけど、これは、よく調査して書かれており、深井史郎の書いた記事がたくさんに掲載されていたのには、とても感心しました。



あまりの分量に、帰宅してからじっくり読んでみたのですけど、深井史郎の音楽観におもしろさを感じました。以下、その要約です。
  1. 日本人には規範とする古典音楽がない。
  2. 雅楽は、現在の生活から生まれてくる感情を表現できない。
  3. 民謡、小唄を主題とする方法は音楽の本質ではない。
  4. 西洋音楽の感情を理解できるならば、西洋音楽を感情を述べる手段としてもちいて少しも不自然ではない。
  5. はきちがえた日本的情緒への決別を宣言しよう。

なるほど、これが、パロディ的な四楽章を書いた人の本質ならば納得。とは言え、これを鵜呑みにすると、しっぺ返しがあって、この曲には、日本音楽とのつながりがある律音音階的モティーフがうまく使われているとのこと。こういう危ない仕掛けをする作曲家さんは好きですね。
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パロディ的な四楽章

オーケストレーションは無駄なところは削ぎ落とし、ラヴェル先生のマ・メール・ロワのように洗練されていて好印象。
深井史郎の場合、チェレスタとピアノ、ハープに偏愛があるのか、オケの中で良く目立っていますね。それにしても「これって、弦チェレ?」というような感じです。まあ弦チェレのような深刻な作品ではぜんぜんないですけどね。
この曲に関しては、やはりレベルが高いと改めて思いました。現在のオーケストラ・レパートリーとして十分に推薦できる曲ですね。
※演奏は、もう少しゆったりとしたテンポにした方がこの曲の良さを出せると思ったのですけど、おそらく、このテンポがスコア通りなんでしょうね。

十三の奏者のためのディヴェルティスマン

これはかなり特殊な編成で、ピアノ、ハープ、打楽器2、フルート、オーボエ、クラリネット、サキソフォン、ファゴット、トランペット、トロンボーン、チェロ、コンバス。宮沢賢治の童話をもとにした放送劇から発展して、12曲の曲集になったようです。
この作品もオーケストレーションは抜群にうまいですね。ただ、オーケストレーションが多彩なだけに、まとめて聴くと少し単調な感じもしました。後半のフルートの独奏が入る部分は印象的ではありましたが、演奏会で演奏するには、この曲集の4〜5曲に絞ってやった方が良いのかもしれません。
※演奏は、なかなかうまかったです。木管楽器群の音量と音質のバランスがとれていたのが好印象。フルートに座布団2枚、クラリネットとサックスに1枚ずつという感じですかね。

平和への祈り

バリトン、ソプラノ、テノール、アルトの独唱と合唱団、オケが入るオラトリオという感じの大曲で、後半部分は、マーラーの第8交響曲のような豪華絢爛な感じになっています。初演が1949年。戦後、間もないころの作品でかつ歌詞が平和を望むキリスト教的なものですから、それなりに感動を呼ぶ作品だったのだろうと思います。ただ、現在のひねくれた現代人にとっては、「音楽としては一流だが、芸術としての賞味期限はとっくに切れていますなあ。」という感じで、私的には違和感がありました。おそらく、戦争というものが、深井史郎に与えた影響が大きなものであったのでしょう。作風が、ステレオタイプ化しており、彼独特のピリリとしたところというかヒネリが無くなっています。
希望としては、オネゲルのクリスマス・カンタータにあるヒューマニズム、欲を言えば、ショスタコのバビヤールの屈折した複雑な不安を調味料に加えてほしかった期待していたのですけど、これらの作品には遠く及びません。
この作品以降、声楽を交えたオケ作品は日本では、たくさん作曲されており、三善晃「響紋」とか一柳慧「ベルリン連詩」、武満徹「ファミリーツリー」とかいった作品が好みではあるのですけど、こうした作品を、深井史郎ならどう評価するのか、聞いてみたい気がします。

最後に、ニッポニカの日本音楽史に対する貢献に感謝しつつ、報告を終わりにいたします。熱演、お疲れさまでした。
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by ralatalk | 2007-03-25 21:12 | コンサート