クラシック音楽を中心にしたポスト現代音楽のためのブログ


by ralatalk

松村禎三:ピアノ協奏曲第1番 コンサート感想編

本年、最初のコンサートに行ってまいりました。

2007年1月19日(金)19:00~ 東京文化会館大ホール
【指揮】
 下野竜也
【出演】
 野平一郎(ピアノ)
【管弦楽】
 東京都交響楽団
【曲目】
  1. 松村禎三:管弦楽のための前奏曲(1968)
  2. 松村禎三:ピアノ協奏曲第1番
  3. ミヨー:ディヴェルティメント〈ケンタッキアーナ〉
  4. オネゲル:交響曲第5番〈三つのレ〉

それにしても大変なコンサートで、2回の演奏会を連続で聴いたくらいのハードな内容でしたが、充実感はたっぷりで満足しました。



この企画は、作曲界の大長老、別宮貞雄氏によるものだったのですが、プログラム的にかなりハードな要求。でもご本人様は、ケロッとされていて、「自分が好きな曲を並べたのだ。」とのこと。恐れ入ります。おもしろかったのがプレトーク。ご長老だけあって今日のコンサートの演目を勘違いしていたとのご愛嬌もありましたが、言いたい放題のトークが気持ちよかったです。

「松村君の協奏曲の2番は有名ですけど、途中で音楽も流れが途切れるところがあって残念。でも1番はとぎれないので良い。」

とのこと。これを松村氏のいる前で堂々と言っていたので、私はやるなあという感じでした。おそらく作曲家にとって一番知りたいことは、

「良いか悪いかを遠慮なく言ってくれ。」

ということですからね。

さて、期待の松村氏のピアコン1番なんですが、CDでは暗譜するくらいに聴きこんでいて、スコアも所持しているのですが、やはり実演とCDでは異なるところがあり、これが意外な発見もあり、また、実演上での問題点も発見しました。

まず、期待以上だったところは、ピアノパートが良く聴こえていたところ。なんせ、この曲は「春の祭典」なみに規模が大きい曲なので、ピアノが聴こえて来るのか心配だったのですが、予想以上に聴こえています。野平一郎大熱演です。
 ただ残念な部分もあり、前半のピアノソロが終わり、41〜60小節目のPiù Mossoでオケがトゥッティで入っているところでは、ピアノがオケに消されてしまいました。ここは重要なバッセージだけに残念でしたが、元々この部分はオーケストレーション的に少し問題があるのかもしれません。オケに厚みがあり、ピアノの右手の音域が高く、ビブラフォンとグロッケン、チェレスタの音域とぶつかり、ピアノの強打がマスクされ聴こえにくいのですね。左手のオスティナートを止めて、右手とのオクターブユニゾンにしておくというバルトークがよく使う方法でもよかったのではないかとも思いますが、左手のオスティナートのしつこい動きも重要なので、難しいところですね。
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↑上記の楽譜は、右手がハ調、左手がイ調になっていますが原典通りです。

全体的にオケに余裕がないくらい緊張感があって、オケも真剣にやっていてよかったのですが、さすがに30分間は、オケの方も緊張を持続しきれず、部分、部分で緩む箇所もありました。
この曲の命は緩みのない緊張感の持続にあるのですが、これは仕方なし。特に木管はかなり苦しそうでしたね。脱落していたパートもあったような気がします(泣き)。
ピアノの方もあんなに苦戦している野平一郎も初めて見ました(少し感動)。ピアノ譜が4段譜になっている箇所もたくさんあり、演奏も大変なんですけど、それ以上に体力が勝負なのですね。
まあ、さしずめ、この曲は、ピアノ協奏曲におけるエベレスト登山とかK2登山という感じですね。むやみにフォルティシモを連続していると、足場をすべらして死にます。なんと過酷な曲なんでしょう。

まあ、何回か、演奏会で取り上げて行けば、確実に道は開けて行くのでしょうけど、現時点では場数と経験が少なすぎますね。次回に期待というか、何回か定期で取り上げてほしいと思っています。

※この曲は、日本人が大切に育てて、重要レパートリーになることを期待しております。矢代氏の作品も良作ですが、日本人ならこの曲で世界に勝負です。


他の曲の感想は以下の通り。
  1. 松村禎三:管弦楽のための前奏曲
    期待通りの演奏。特にチェレスタと金物系打楽器群の響きは斬新でよかったです。トランペットも随分がんばっていましたね。

  2. ミヨー:ディヴェルティメント〈ケンタッキアーナ〉
    この曲は、初めて聴きましたが、ミヨーらしい明るく楽しい曲ですね。なんか大正時代の無声映画を見ているような感じがしました。

  3. オネゲル:交響曲第5番〈三つのレ〉
    この曲で有名なのが、ティンパニ。舞台の右側にポツンと1台おかれ、各楽章の終わりに1打(レ)を叩くだけという変った趣向。
    オネゲルの5番というのは、暗い曲というイメージが先攻し過ぎていますけど、それ程、暗い曲とは私は思っていません。ショスタコーヴィチは言うまでもなく、マニアに大人気のペッテンションの方がもっと暗黒の世界を堪能できます。なので、むしろ、オネゲルの卓越した対位法を楽しむべき曲だと思います。特に感心したのが、都響のオケ配置。第一、第二バイオリン、チェロ、ビオラ、少し間隔を後ろに下げてコントラバスを配置。オネゲルの場合、対位法のパッセージを各パートごとにグルーピングして演奏させているため、この動きが立体的によくわかりました。これはステレオ装置では味わえない感覚ですね。少し後ろに下げたコントラバスの動きはなかなか良かったです。

■追記
松村禎三氏は、車椅子姿で痛々しいお姿でした。一柳慧氏もおられたようですが、随分と年を取られた感じです。かつて日本の前衛を支えた作曲家も随分と高齢化が進んでいるのですね。松村禎三氏を超えるくらいのパワーを持った若手邦人作曲家は果たして出てくるのでしょうかね。

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by ralatalk | 2007-01-19 22:55 | コンサート