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クラシック音楽を中心にしたポスト現代音楽のためのブログ


by ralatalk

シュポーア:バイオリン協奏曲第8番イ短調

本日、たくさんのバイオリン協奏曲のCDを購入して来たのですが、まずトップに聴いてみたかったのシュポーアの作品です。



理由は、「最新名曲解説全集 協奏曲II」に書いてあった記述があまりにも珍妙だったからです。最新名曲解説全集は、作曲家さんが書いた場合は、割と客観的な記述なのですが、評論家さんが書いた記述におかしな部分が散見されるのですね。で、以下その内容の抜粋です。このバイオリン協奏曲の演奏がされなくなってきた理由が記載されている部分です。

  1. パガニーニに代表される、十九世紀の名ヴァイオリニスト=作曲家の限界を、シュポーアもまた克服することができず、作風がマンネリ化したのが、その最大の原因である。
    ※150曲ある彼の作品を聴いたのか疑問ですね。どこかの海外文献をそのまま流用?

  2. シュポーアの作風と特徴としてあげられるのは、半音階的和声を好んで用い、したがって転調が多く、色彩的に豊かなこと、掛留を多く用いることによって和音の単純な形態を避けたことである。これら技法は、のちにワーグナーによって徹底的に追求され、完成されるのであるが、シュポーアのそれは、当時としては進んでいたとは言え、ワーグナーを知っている現代の愛好家にとっては、不徹底、不十分と感じざるをえない。
    ※この理論でいくと、ワーグナー以前の曲はクズ曲?。

不思議に思うのが1ではマンネリと書いておきながら2では進歩的と記述しているし、2に関して言えば、文章そのものが変。ワーグナーと比べればベートーヴェンも不徹底だし、シェーンベルクに比べればワーグナーも不徹底と言えるし、シェーンベルクもブーレーズに比べれば不徹底と言えるので、歴史的な経緯を無視したこの記述には無理があるような気がします。シュポーアとワーグナーでは世代に開きがありますしね。

でも、さすがに我が国を代表する超高名な音楽評論家さんのお書きになった銘文(迷文?)だけあって名曲発掘のヒントになるのですね。

その理由は、何も知らない初心者ならこの文章の通りに簡単に信じ込まされているところなんですけど、長くクラシック音楽の評論を読んでいるお優しい寛容の方なら、これは、かなりの名曲なのではないのか?と疑うべきことくらい経験でわかるのですね。

※ベルナルト・ハイティンクのファーンの人ならわかりますよね。

つまり、この曲は評論家レベルでは理解できないくらいすごい曲なのだということでワクワクするわけです。で、次に作曲家さんの書いた文章を照らし合わせてみて、評論家さんの書いてあることと違えば違う程、期待のボルテージがヒートアップしてきます。

で、シュポーアを聴いてみたのですが、なかなかすばらしいじゃないですか。これは大当たりです。良く工夫された構成だし、旋律も美しい。感情に溺れるわけでなく、ベートーヴェンのように抑制され均整も取れています。当時のドイツでは、ベートーヴェンより有名だったらいしいので当然と言えば、当然なんですけどね。

特に気に入ったのが、独奏バイオリンが曲が始まってすぐに入ってくるところです。当時の曲は、ソナタ形式の第一主題と第二主題が終わったあとで、ようやくソロが入るというのが定石化されていて、随分ともったいぶった感じがするのですが、この曲は割とすぐに第二主題としてソロバイオリンが出てきます。それに第一主題はオーケストラ、第二主題はソロバイオリンが担当するという対話形式で進んでくるところ、安易な繰り返しを避け、各主題が変奏、展開されながら進行するなど、割とベートーヴェンの曲のように曲が進行するところなど随分と工夫されているのがうれしいところです。
当時としては、かなり進歩的な曲のように思います。ベートーヴェンのバイオリン協奏曲が初演されてから7年後にこの曲が作られているわけなんですが、多少影響もあるのでしょうね。
そして、この曲の作り方は、なんとなくメンデルスゾーンのバイオリン協奏曲にも影響を与えている気がするのですが、そのところは、研究してみないとわかりませんですね。

追記1:

このCDには、バイオリンとハープのための協奏曲も収録されていたのですが、実はこの曲の方が気に入っています。あのモーツアルトの「フルートとハープのための協奏曲」に匹敵するくらい素敵な曲です。
シュポーアは、ハープ奏者であった奥さんをとても愛していたそうで、そうしたことがこの音楽には自然とにじみ出てきていますね。これが埋もれていたとはもったいないことです。バイオリンをフルートに編曲しても随分と良いと思います。

追記2:
このCDは以下の演奏です。
バイオリン:ピエール・アモイヤル
ハープ:マリエル ・ ノールマン
指揮:アルミン・ジョルダン
オケ:ローザンヌ室内管弦楽団

それにしてもバイオリンの音があまりにもに美しい音だったので気になって、調べてみたのですけど、ピエール・アモイヤルって、ハイフェッツの愛弟子だったのですね。エピソードがとにかくおもしろい。是非ともウィキペディアを読んでみてください。不勉強でした。
by ralatalk | 2007-01-13 01:09 | バイオリン協奏曲