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クラシック音楽を中心にしたポスト現代音楽のためのブログ


by ralatalk

【番外編】10月29日 美探先生のコンサート

本日は、美探先生指揮による弦楽合奏のコンサートがありましたので聴きに行きました。
それにしても田舎です。コンサート会場の周りはこんな風景です。
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会場も食事をする所くらいはあるだろうと思っていたのですが、食堂はないし、周りに店もない。困ったなあと、係の人に近くに食事を取る所がないかを尋ねてみたところ、
「ございません。でもお弁当が一つ余っているので、よろしければご一緒にどうぞ。」
ということでご馳走になりました。お弁当は大名弁当というのでしょうか、大ぶりで豪華なものでした。まあ、これが、のどかな田舎の人の良いところなんですね。東京では考えられないことなので、新鮮な気分になりました。

お弁当を取るために楽屋行くと、ちょうど美探先生ご夫妻と一緒になりました。
「早いね。何時に出てきたの?」
「11時です。」
と返事したところで、練習が終わった楽団員さんが数名、楽屋に入って来ました。挨拶の仕方を見てもかなり尊敬されている先生なんだあと良くわかります。
美探先生の方は、
「このおかずはおいしいのか?」
と奥様の方にいちいち尋ねてからお口に箸を運んでいらっしゃるのが、何かユーモラスでしたね。

さて、本番のコンサートの方ですが、美探先生の指揮は、武骨というか、どちらかというと指揮というよりは、指導、トレーニングという感じの指揮でした。例えるなら猛獣使いという感じで、前列で座って見ていたのでその気迫というか凄みがヒシヒシと伝わる指揮でした。
「そこはそうじゃないでしょう。」
「もっと音を出して!」
というのが、声に出してはいないのですけど、良くわかりました。


弦楽合奏の全体は、美しい音の実現ということで、綺麗なハーモニーは実現されており、先生の考えている音楽のおそらく80%~90%は実現できていたのではないかと思います。後は、楽団員の力ということになりますか。

※演奏を録音したものを後から聴いてみたのですが、録音の方が、細かなミスが消えていて実演よりもうまく聴こえます。普通は逆になるんですけど、これがアマとプロの違いなんでしょうか。あるいは、目で見ている情報の影響も大きいのでしょうかね。

弦楽合奏で特に感心したのが、コントラバス、チェロのアンサンブル。音楽に対しての反応がとても良いので、聴いていて気持ちが良かったです。出す所は出し、控えるところは控える。このコントラストが鮮明で良かったです。プロと言えども、どうしても自己顕示欲が出るのか、こういう演奏ができる人は少ないのですよね。特にコントラバスは1人で全体を支えており、特筆の演奏でした。

ビオラ・セクションは、まずまずといったところでしょうか。ビオラパートは目立つ部分が少ないのであまりコメントができませんが、一人、体の小さな女性奏者が、43cmはあるような大きなビオラを弾いていたのが印象的でした。この場合、楽器を下方向に下げて弾くことになり、体の負担が大きそうですね。

バイオリン・セクションは、ハイポジションのところで少し音程が危なくなる部分もありましたが無難な演奏。モーツアルトの場合、些細なミスでも本当に良くわかるので怖いですね。
バイオリン・セクションとしては、もう少し音楽的反応、あるいは自発性というものがあっても良かった気がするのですが、この部分に関しては、「気合を入れろ!」というような美探先生の指揮ぶりからも、少し鈍さを感じました。
例えるなら、バッファローの群れ。バッファローの群れは、ある一頭が、動き出してから全体がバラバラと動き出すのですが、コンミスの反応を見てから動くというようなところがあり、これが全体の動きを重くしているのですね。

ソロ・バイオリンは、美探先生のお弟子さんでプロ候補生の女性。曲はビバルディの四季です。少し演奏にミスがありましたが、落ち着いた感じでカバーできていたのが好印象。私なんかだと、真っ白になって止まってしまうところですが、さすがです(これは皮肉ではありませんのであしからず)。演奏は美探先生の教えの通りの運弓法で、これを守っているかぎり、音は柔らかく澄んだ音になるのですね。なる程と感心しながら聴いておりました。

 ここで、少し頭に浮かんだのが、ソリストになるための条件というもので、ソリストはステージの花ということもあり、普通の楽団員よりも20%以上は目立つ必要があるということ。

目立つにはやはり音量。音は美しいままで、音量はできるだけ大きくという難しい課題があります。。簡単に解決するには、PAを使う方法もありますが、これだとクラシック演奏の伝統を変えることになるので実現は不可能。工夫すべきところは、奏法か、弦か、楽器か。いずれにしてもソリストになる人は、ある意味、音楽の大事な部分を少し削ってでも、音量を確保というのが、仕方のない選択なのかもしれませんね。

※ソロバイオリンの場合、少しピッチを上げて演奏するという隠し技もあるらしいのですけど、今回の演奏ではその技は使用されていませんでした。
by ralatalk | 2006-10-31 14:36 | パガニーニへの道