ビオラの演奏を聴いてみる
2006年 09月 19日
さて違和感は以下の通り。
1.音域が違う
実はこの曲集、オリジナル楽譜が紛失になっており、原曲がチェロのために書かれていたのかどうかも疑問らしく、ある人は、もしかしたらヴィオラ・ポンホーザのために書いたのではないか推測している人もいます。いずれにしてもビオラで弾く場合は1オクターブ音域が上がるだけなのですが、これにすごく違和感があり、気持ち悪く感じてしまうのです。私は絶対音感はないはずなんですけど、何でしょうかね。この曲の別の編曲、フルートとかサックス版とかの場合は、それ程気にならなかったのですが。
2.アタックが遅く、サスティーンがやや膨らみ加減になる
これは楽器の特性なんでしょうね。いつもはチェロの切れの良い演奏を聴いているので、それと比較するとブニョニョしている感じです。おそらく奏法的な問題もあるのでしょう。プリムローズもこの曲の演奏は、いろいろと問題のある個所が多いという指摘もしていますね。
3.バッハにしてはテンポが揺れる。ねっとりした感じが少し演歌ぽい。
これは好みの問題です。カザルスの少し演歌ぽい演奏も味があって良いのですけど、個人的にはビルスマとかマイスキーのようにメリハリと切れのある演奏が好きなので、今井さんの演奏は好みからはずれますね。ただ、エチュードを弾くようなつまらない弾き方ではないので個性的におもしろいとは思いました。
4.ビブラート
これも演奏者のスタイルの問題で、どうこうという問題ではありません。ただ、私の好みから言えば、少しかけ過ぎで速いように感じました。この楽器の良さを引き出すには、ノンビブラートをベースにして必要最小限のところで効果的にゆったりとビブラートをかけた方が良い結果を生むのではないかと想像しています。ビブラートの件についてはプリムローズの著作にもあるのですが、彼の演奏を聴いていないので、大きなことは言えませんが。
ということで、バッハだと違和感が大きすぎたので、次回は、オリジナルのビオラ曲で今井さんの演奏を聴いてみたいと思います。とは言え武満とかの前衛指向の現代曲だと楽器の良さ(5度、4度、3度、6度の純正な響きの共鳴)は引き出すことは期待できないので、ちょっと購入に躊躇するところがありますけどね。
いずれにしても、ターティスとかプリムローズとかの大御所の演奏もよく聴いておかないことには、ビオラを語る資格はないですよね。プリムローズの著作によると、古い時代の大きなビオラの求める人と、サイズは小さくなってしまうがストラディバリウス、ガルネリ型を好む人とに別れるらしいのです。ターティスの場合は、大きなビオラの推奨者だったのですが左手が故障してしまったので、一時引退し、それからターティスモデルという小型でも低音域が充実したビオラを作らせて現役復帰したとのことです。
あと平野真敏さんの演奏するワグナー激賞の幻の巨大ビオラ(ビオラアルタ)も是非ともに聴いてみたいですね。
ヴィオリストのレパートリーが確立されていくのは、ターティス以降の20世紀。バルトークのビオラ協奏曲で有名なプリムローズは少し後。英国ですばらしき2人の巨匠が揃ったため、英国においてビオラの曲が多いとのこと。英国の場合、バックスとかヴォーンウィリアムズとかドカチン系現代音楽とは縁遠いので安心して聴けるというのは利点ですかね。