クラシック音楽を中心にしたポスト現代音楽のためのブログ


by ralatalk

君は武満を聴いたか?

昨日、武満徹のコンサートに行ってきました。曲目は以下の通り。

[曲目]

* 武満 徹:カシオペア
Cassiopeia(1971)
〜独奏打楽器とオーケストラのための
[若杉/加藤]
シカゴ ラヴィニア音楽祭委嘱作品。
【初演】1971年7月8日 ラヴィニア音楽祭 小澤征爾/ツトム・ヤマシタ/シカゴ交響楽団

* 武満 徹:アステリズム
Asterism(1968)〜ピアノとオーケストラのための
[高関/高橋]
RCAビクター委嘱作品。曲名は「星群」「星座」などを意味する天文学用語。
【初演】1969年1月14日 トロント(カナダ) 小澤征爾/高橋悠治/トロント交響楽団

* 武満 徹:ジェモー
Gémeaux(1971-86)〜オーボエ、トロンボーン、2つのオーケストラと2人の指揮者のための
[若杉(オーケストラ1)/高関(オーケストラ2)/古部/リンドバーグ]
サントリーホール国際作曲委嘱シリーズ第1作。曲名は「双子座」の意味。
【初演】1986年10月15日 サントリーホール 尾高忠明/井上道義/B.グレツナー/V.グロボカール/東京フィル/新日本フィル

[出演]
指揮:若杉 弘/高関健
ピアノ:高橋悠治
パーカッション:加藤訓子
オーボエ:古部賢一
トロンボーン:クリスチャン・リンドバーグ
東京フィルハーモニー交響楽団

※岩城宏之が、体調不良のため高関 健指揮に変更になっています。
岩城さんの最近の健康状態が気になるところですが、高関さんは結構がんばっておりましたね。



以下、ざっと感想など。
今回の作品は、すごい特殊編成の曲ということで日頃聴くことのできない珍しい作品群であるということ、そして久々の天才高橋悠治の出演ということもあって、かなり期待しまっくて聴きに行ったのですが、期待を裏切らない良い演奏会でした。

●カシオペア

とにかくすごい打楽器群の数。半端じゃありません。はじめて見るような打楽器がたくさんありました。さながら打楽器の博覧会のような様相。ステージの中央にソリストのための打楽器コーナーがあり、そこに武満作品にめずらしくティンパニが1台おいてありこれを中心にバスドラ、シンバル、ドラ、アンティークシンバル、カウベル、日本の警鐘?、スチールドラム、ツリーチャイム、正体不明のCDに似た大きな円盤、ドラムカン!、そしてステージ前にログドラムが鎮座。
そしてオケの中にチューバーベル(×2!)とアンティークシンバル、シロフォン、チェレスタ。
曲のプログラムをみると打楽器の配置は、カシオペア座にならいWを上下に反転させた形で配置。
 演出も凝っていて、オケが始まっているのに、肝心の打楽器奏者がいない!。どうしたんだろうと思っていると、カスタネットを打ちながら客席中央の右から打楽器奏者が出現。ゆっくり歩きながらステージへ、そして打楽器コーナーへというシアターピースの要素が入っていたのですね。
 なかなかシャーマニズム的でエキゾチック、曲の途中から入るログドラム連打は、どこか宗教的儀式のような感じでした。やるなあ、武満。こういう想像力豊でパワーのある曲も書いていたのですね。

●アステリズム
 
 この曲は、40秒間の無限クレッシェンドで有名な武満作品の中でもレベルの高い作品の一つで、独特の爽快感がありますね。今回は、天才高橋悠治ということで、どんな演奏をするのか予測不能なところがあって聴く前からワクワク気分。事前にプログラムのなかで権代敦彦という作曲家との対談がものすごいことになっていて、権代さんは、徹底的に武満が嫌いということで武満音楽を否定しまくり。それにわざとのって語る天才高橋悠治の返答が冴えに冴えており、現状の音楽業界の問題点までも指摘しているというものすごい内容です。よくプログラムに掲載許可がおりたものだと感心。並のプロデューサーの企画ではないですね。業界にしがらみだらけの音楽評論家では絶対に書けないレベル。すごい、とにかくおもしろい。

※私の後ろの客席の人も「すげ〜。悠治さんらしい。」と笑っておられました。

プログラムでは、「じゃあ、何で今回やるか?それはやっぱり友達だったからさ。」という言葉と、「武満のスコアを一種の台本のように使って・・・」というのは、「使って」というところまではいいと思うだよね。だけど「高橋悠治の音楽をやる」のはよくない。(略)「武満の音楽から何が発見できるか」をやると言う宣言にこの人の真実があるんですね。
 演奏は、まさにその通りに実現。無駄のない純度の高い武満の音楽になっています。
それにしても、この人の存在感はすごいものがあります。演奏中に音楽エネルギーのオーラが何本も見えました。日本人でオーラが見える演奏家は、高橋悠治、野平一郎、須川展也。音楽を愛する心と、音楽で哲学することのできる演奏家の境地を見た感じがしました。

●ジェモー

 これはCDで聴いていると、明らかに「駄作」と切り捨てる曲なんですけど、駄作であっても前向きな駄作として少しは評価してみる必要があるかもしれません。
駄作と私が感じる理由は、以下の通り。

1.前半2つの楽章が、「鳥は星形の庭に降りる」「カトレーン」から流用してきたと思える自己模倣のパッセージがたくさんあること。
2.楽章間のコントラストがほとんど取れていないこと。途中で眠くなりました。
3.2つのオーケストラに分けて演奏するというアイデアがアイデアだおれになっていること。
 武満の音楽はテンポ感がないので、2つのオーケストラが一つに聴こえてしまう。オケを分けてもその効果が生きてこない。
4.楽器の編成が大きすぎて肝心のオーボエソロがほとんどわからなくなっていること。
5.ソロ楽器の扱いが下手。ソロ楽器とオーケストラが対立する軸がない。

2つのオーケストラに分けて演奏するというアイデアは非常におもしろいと感じました。ただ不器用な作曲家で音楽のユーモアセンスに欠けるまじめな作曲家の武満ですのでコントラストがなかなか付けられず無理があったのですね。このアイデアを他の器用な作曲家でやってもらえると、テンポの速い曲調と遅い曲調を同時に演奏するとか、指揮者とオケの関係をクロスさせるとか(AオケをBオケの指揮者が指揮する)、2人のソリストがそれぞれ別のオケに引っ越しするとか、退場するとかあればもっとおもしろかったのですけどね。
 この手のジョーク的アイデアでは、シュニトケの作品とか、柴田南雄さんの作品でおもしろいものがあるんですけどね。

ということで、以上です。
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by ralatalk | 2006-05-29 01:50 | コンサート