クラシック音楽を中心にしたポスト現代音楽のためのブログ


by ralatalk

イエレさんのフランスオールド弓講座

日曜日に弦の購入のため、御茶ノ水のクロサワ楽器店に行ったところ、ちょうど良いタイミングでイエレさんの「フランスオールド弓講座」というのが開催されていたので、聴講することにしました。
 講義の内容は、弓の製作と良い弓の選び方というのが主な内容でした。弓の製作に関しては、フェルナンブコという豆科の木がどんなものかということから始まって、その切り出し方の説明がありました。私は、フェルナンブコという木がどんな木かすごく興味があったのですが、スライドでみせてもらいました。思っていたより大木。もう少し細い木なのかなあと思っていたのですが、そういえばジャックと豆の木という絵本に描かれているのも結構な大木だったのを思い出しました。

この木は、世界的にも非常に貴重な木で、弓の材料となるまでに約60年、弓の材料として使えるのはその5%に過ぎず、切り出して後、20年は放置するといいますから、市場に出ているフェルナンブコ材を使った弓が非常に高価なものになるというのがわかります。

さらに切り出したフェルナンブコから、最上級の音響特性で取れる部分はほんのわずかです。なんかマグロの大トロとおなじようなもんですかね。

ちなみにこの部分だと、新作の市場価格で50万円以上になっているようです(私の感覚です)。

また気になっていた弓の色なんですど、濃い茶色のもの程、高級かと思っていたのですが、これはあまり関係がないとのこと。土の成分によって色がいろいろ変化するようです。高級なものかどうかは、スティクの木の艶とヘッド部分のたて横に走る木の目で判断できるとのことです。他にも振動器を当てて物理的に音響測定をするというのも現場ではやっているようです。

切り出し方は、ここでも意外でしたが、ある程度弓のカーブにあわせて切り出すとのことで、これはフェルナンブコが非常に硬くて加工しにくい材料であるためです。もちろん後工程の仕上げのときに反りを入れますが、反りの戻りを最小限にするという工夫なのかもしれません。

後、細かなポイントをまとめると以下のようになります。

●ヘッド
 これは、弓製作者のプライドを示す部分で、人間の指紋みたいなもんで、弓の製作者によって違うとのことでした。

●弓の形状
 丸にするか、八角形にするかは、最終的な弓の重量をどうするかによって決定するとのことです。ちなみに丸弓は、8角から16角、32角、64角、128角としていき最後に丸弓に仕上げるとのことでした。ちなみに重いと削る必要があるので丸弓になるとのことで。削るごとに秤で重量を測っていたのが印象的でした。

●弓の後ろ
 ねじの部分は、非常に薄いので丁寧につくらないと、割れの原因となるそうで、かなり気をつかう作業になるとのこと。後ろの部分は、各国の個性がでるところで、これをみるとフランス弓、ドイツ弓なのかがわかるとのことでした。

●フロッグ
 黒檀の原木のサンプルを見せていただきました。ずっしりとした重い木です。
 パールアイは、その昔、フランス弓が最初に採用したところ普及したとのことです。

●ホワイトチップ
 ここも割れやすいので、注意が必要とのことでした。

●ラッピング
 銀の材料が一番使いやすく、鯨の髭は途中で折れたりするため加工が難しいとのことでした。サンプルのスライドでは、鯨の黒髭と白髭が交互にまかれたものが提示されました。う〜ん、かなり美しい芸術品ですね。

最後に少しいじわるな質問をしてみました。

「将来、最高級のフェルナンブコとおなじ音響特性をもつカーボン素材があったのならどうでしょうか?」

イエレさん曰く、「フェルナンブコというのは、木でできている関係からまったくおなじ弓というのはできない。将来カーボン素材が、完璧なものになったとき、弓は均質な工業製品と同じようなものになり、より安く提供できることが可能になります。」

で、話の途中でわかったんですけど、手工製品の弓とかバイオリンは、世界で同じものはまったくない。同様に人間の指や手のひら、手首、肩、肘、顎も同じものは存在しません。すべてが工業的に規格化されたものになったとしたら、人間の形状の微妙な差異を吸収できる弓とかバイオリンは存在できないことになるということですね。

それにしても、クレモナ・バイオリン学校でないと教えていただけないような本物の知識を教えていただけるとは、なんと幸運なことでしょうか。イエレさんには、本当に感謝です。

 次回の講義は、バロック弓についての講義とのことで非常に楽しみです。

追記:

 弓の良し悪しは、なかなか難しいですね。しかも腕がヘボだと、その弓の性能はまったく引き出せないですからね。ちなみに、お店の常連さんで、バイオリン歴16年くらいの愛好家にニコラ・マリーンのフランスオールド弓で弾いてもらったのですけど、その人がプロバイオリニストに変身、バイオリンもストラディバリウスのような気品のある音色にかわったのは、信じられないような光景でした。魔法の杖とは良く言ったものです。
 ちなみに私が弾いた場合だと、悔しいところですけど40万円くらいの新作弓(こちらも良い弓ですけどね)との差はほとんど出ないです。名馬とおなじで弓は人をかなり選びますね。
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by ralatalk | 2006-02-20 22:29 | バイオリン