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クラシック音楽を中心にしたポスト現代音楽のためのブログ


by ralatalk

HDレコーダ君に感謝

HDレコーダー君に「バイオリン」という用語で自動録画するように設定していたおかげで、思いもかけない出物を収録することができました。

BS2で放送されていた「バイオリンの芸術」というのがそれです。

最初、何だろうという感じで見てみたところ、これは「こりゃすごい。」これって私が今一番みたかったものですね。
シゲティ、エルマン、クライスラー、ハイフェッツ、メニューイン、ティボー、オイストラフ、それに伝説のバイオリニストのジネット・ネヴー、貴重なイザイとエネスコのフィルム。これにパールマンおじさん、ギトリス爺さん、ヒラリ・ハーン譲、イダ・ヘンデルおばさんの豪華解説付きです。

いにしえの大バイオリニスト揃い踏みです(大感激)。

私は、こうした過去のカリスマ性のある俺流バイオリニストが好きです。音程が多少外れていようと、ビブラートが大げさだろうが、ポルタメントを多用していようが、楽譜と多少違っていてもまったく問題なし。そんなことより、そこにある音楽の真の姿を聴きたいのです。
 そもそもバイオリニストたるものがピアノの平均律なんていう不自由なもんに合わせる道理はまったくないですしね。せっかく自由になる音程があるのだから独自な音律でどんどんとやってほしい。フレーズの微妙なニュアンスを醸し出せる楽器なんですからね。

そうしたことを代弁してくれるかのようにヒラリー・ハーン嬢が笑いながら語っていたのは、すごく印象的でした。

 「昔のバイオリニストは指揮者なんか見ていなかった。オーケストラがバイオリニストに合わせるのです。それが当然のことだったのです。」
 
 印象的だったのは、やはりハイフェッツ。競演していた巨匠フリッツ・ライナーなんかも小さく見えてしまう圧倒的なカリスマ性。なんかフルトヴェングラーとカラヤンを合体させたような何者も寄せ付けない王者の貫禄を見せ付けています。途中で、こうした神がかり的な演奏に若いご婦人が目をうるうるさせてところも印象的でした。
とにかくものすごい弓さばきで、弓が見えません。なる程、こういう弾き方だからこのようなはっきりとした音になるのかと納得。ロシア式運弓法の奥義を見せてもらいました。

 続いてはエルマン。このタイプのバイオリニストはもう世に出てこれないですね。こんな弾き方をしていたらコンクールで一発アウト、退場です。でも、すごく甘い魅了的な音だし、人の心をくすぐるようなところがあります。弾き方がユニークで、高域を弾くときと、低域を弾くときで姿勢が大きくかわります。幅広いビブラートをかけるために爪を伸ばしていたり、楽器をもつ角度をかえたり。とても愛嬌のあるお顔もいいですね。

 ティボーもよかったです。技術オンリー主義の音大生からは音程が悪いとか、いちゃもんを付けられるような演奏なんですけど、すごく味がありますなあ。独特のフレーズ感覚。ヨーロッパの古い民謡、特にルーマニア、ハンガリーなんかは微妙な音程を含むものがあるのでこうしたスタイルを借用しての演奏。すごくフレンドリーな人懐っこい音。その大きなグローブのような手。興味深いですなあ。ロック・オンしておきますかね。

 そして、目玉はジネット・ネヴー。

 さすがにあのオイストラフに大差をつけてコンクールを優勝しただけのことはありますね。女性とは思えないくらい、すごく太い音で周囲を圧倒させるだけのカリスマ力。
ヘンデルおばさんも「これが唯一で絶対の解釈と信じさせるものがあった」と言っています。そして、鋭い鷹のような目付き、ものすごい集中力。音楽の魂の塊。こんな目で睨まれてしまっている指揮者なんかはかなり緊張するでしょうね。
 ショーソンの詩曲の最後で微妙に変わっていく音程。何か生き物のよう。見ていて背筋がぞくぞくしてきますね。蛇足ですど、ギトリス爺さんのジネットの物まね解説は笑えました。

それにしても、でかしたぞHDレコーダー君。
by ralatalk | 2005-12-13 00:37 | 音楽エッセイ