クラシック音楽を中心にしたポスト現代音楽のためのブログ


by ralatalk

エネスコの音楽

最近、エネスコというルーマニアの音楽家に興味があっていろいろ調べております。
エネスコは、ルーマニア語では、エネスクになるらしいのですが、ここではエネスコとしておきます。
 エネスコに関しては、ヴァイオリン教本を書いたイオネル・レジェンタがエネスコの弟子であったことから興味をもち、伝記も読んでみましたし、管弦楽全集、8重奏曲、バイオリンソナタ1~3番のCDを購入して聴いてみました。

エネスコは、19世紀後半から20世紀中に作曲家、バイオリニスト、ピアニスト、指揮者として活躍した最高の音楽家の一人でもあるし、大バイオリニストのメニューインの師匠でもあるので、クラシック音楽が好きな人なら名前くらいは知っている人も多いでしょう。ただ作品については、日本ではあまり知られていないようですね。





 活躍時期としては、ブラームスの晩年の後期ロマン主義からブーレーズ等の戦後前衛主義が始まる次期に重なります。
 作風は、初期のころは、ブラームスとかドヴォルザークといった民族音楽を素材にした若々しくわかりやすいものですが、中期になってくるとリヒュアルト・シュトラウスをより複雑にしたような作風に、後期になると、すべての作風を煮詰めて出汁を抽出したかのような無駄のない深みと味わいのある作風になってきます。

 エネスコの音楽において感心するところは、どの作品も手抜きが無く、常に音楽を追求しようとする音楽に対する意欲、誠実さがあることで、この姿勢は死ぬまで変わらなかったことです。名声を得ようとかの野心は感じられず、ただただ音楽に奉仕する控えめな姿勢。バッハ、ブラームスといったドイツ音楽本流の深みと渋みももっています。それゆえに作風はかなり地味なので、何回も聴いてみなければその良さというのがわかりずらいところがあります。
 フランス、アメリカで活躍していたのでそちらの影響があるものと考えていたのですけど、フランスの影響は、ドビュッシー的な部分もあるんですけど、それは表面的なものです。アメリカからの影響はというとアイビスの作風に近いものを感じますが、直接影響があったのかどうかはかなり微妙です。時代的にもアイビスの前の人ですからね。
 
以下、各曲についての簡単な感想などを

1.ルーマニア狂詩曲 第1番/第2番(1901/1902年)
 
 エネスコの代表作とされている初期の管弦楽曲です。第1番の方は、曲の構成とか、楽器の使い方がまだ習作という感じがして魅力を感じませんでした。これが、「代表作」というにはあまりにも馬鹿げていますし、エネスコ作品の評価の妨げになっているような気がします。
 とりあえず第2番の方が、第1番よりも音楽的には練れていますが、これでも不十分。私がエネスコに期待するものはもっと大きなものです。

2.組曲第1番(?年)
 
 初期の管弦楽作品ですけど、この作品はいろいろ実験がされていておもしろいです。最初に度肝を抜かれたのが、プロレスでいう反則技すれすれの第一楽章。
なんとこの曲は、無伴奏バイオリン曲をそのままオーケストラにしたような作品で、始終このスタイルを通すというのが前代未聞。この楽章が終わったときに唖然としてしまいました。曲が盛り上がったところでテンパニのトレモロが入る部分があり、これはバルトークの弦チェレの第一楽章のパロディ?か思ったりもしましたが、もちろんこちらの方が先に書かれている作品なので、「もしや、おいバルトーク。やってくれるじゃないか」という感じですかね。エネスコ自身も弦チェレの指揮はやっているので、さてさてどう思ったことやら。
 さらに調べると、マーラー自身が、亡くなる1911年にこの作品をニューヨークで指揮しているのですね。マーラーは、どのような感想をもったのでしょうか。
 とにかくユニークな作品。エネスコ自身も結構気に入っていたみたいですね。

3.組曲第2番(1915年)

 この曲はあまり印象に残りにくいですね。もう少し聴き込みが必要なのかな。

4.組曲第3番「村人たち」(1937~38年)
 第二次世界大戦が勃発した1939年にニューヨークでエネスコ自身の指揮で初演されています。オケはニューヨークフィルハーモニーです。この時代にストラヴィンスキーはハ調の交響曲なんかを書いていますね。
 この曲は、エネスコの管弦楽の作品では一番優れている作品だと思います。部分的に無調を取り入れており、このため音が斬新で、ウェーベルンのような響きがする部分もありますし、武満徹を先取りしたような響きもあります。かと言って現代曲に特有な独り善がりの難解さというのを感じないというのも好感度が高いです。3つの楽章間のバランスが非常に良い作品ですね。

5.交響曲第1番 (1904〜5年)
 1911年にニューヨーク管弦楽団により初演されてます。
 技術的には良く書けていますが、音楽大学の卒業課題をこなしたというレベルの作品ですかね。典型的な水戸黄門型の交響曲なんで、私的には、良い子過ぎてNGです。型をはめて作るのも悪くはないんですけど、マーラーの6番みたいに型を限界一杯までぎしぎしといわせて、このままでは崩壊してしまって本当にやばいぞと思わせてくれるような緊張感みたいなものがないとね。
 それができないのならショスタコみたいに形式をうやうやしく前面に出して「こんな古臭いことを当局に強制されています。」みたいな部分もあって良いかと。

6.交響曲第2番(1913年)

 交響曲第2番は、凡作の第1番と違って、なかなかすごいことになっております。響きは、リヒアルト・シュトラウスのような音楽ですけど、シュトラウスと比べると音響はすっきりしています。
 感心したのは、形式、構成がまったくつかめないくらい複雑な音楽になっていること。マーラーの第7交響曲やシベリウスの第4交響曲以上に複雑な形式をとっており、何回も聴いているんですけど、未だに全体像がわからないです。聴き甲斐がありますなあ。スコアでも購入して研究の価値ありですかね。

7.交響曲第3番(1919年)

 これも複雑な音楽なんですけど、第2番でゲップ状態なので、もう少し後からじっくりと聴いてみることにしますかね。

8.バイオリンソナタ第1番~第3番(1987年/1899年/1926年)

 ヨアヒムが若いときのエネスコと演奏して脅威に思ったという第1番。
 「こいつは、フランクよりモダンだぞ」といったらしいですね。
 第1番は、初期作品にしては隙がないですね。エネスコはやはり室内楽で真価を発揮するタイプですかね。
 第2番もすばらしいですけど、絶対的に気に入っているのが、第3番「ルーマニア民族風で」。
  これは、ある種の境地を知った人のみが書ける音楽で、深い内容があります。
 エネスコの中期の作品には、少しやりすぎている部分があって、普通の人ではついてこれないような部分があるんですけど、そうしたアクが取れた枯れた味わいというのはすばらしです。ブラームスにもそうした部分がありますけど、爺くさい感傷的な部分がないのが更にGoodです。高貴で暖かいヒューマンな音楽というのがエネスコ音楽の特徴でしょうか。
 まだ、オペラ作品とか聴いていない作品もあるのでどうかわかりませんけど、この作品が最高傑作なのでしょうかね。これは並の作曲家ではとても書けないレベルにあるのでそう直感してます。次点は「組曲第3番」ですかね。

●エネスコについては下記のサイトによい記述ありますね。

ヴァイオリニスト吉見由子さんのサイト
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by ralatalk | 2005-12-02 12:34 | 音楽エッセイ