クラシック音楽を中心にしたポスト現代音楽のためのブログ


by ralatalk

歴史に残るコンサート その2

冷静になった状態で前回、記述していなかった曲目について書いてみようと思います。このコンサートはそれ程内容が濃いものでした。

●ペンデレツキ:広島の犠牲者に捧げる哀歌

この作品は、前衛音楽の雛形とも言えるくらい多くの作曲家に模倣させてきたスタンダードともいうべき超有名曲ですが、私は今回初めて聴きました。本来ならずっと以前に聴いておくべき作品なんですけど、「広島の犠牲者」というタイトルに偽善的なものを感じてずっと避けてきました。広島の惨劇というのは、人類最大の過ちであり、すべてを失って途方に暮れている犠牲者に対して、この惨劇を再現するような音楽を聴かせてさらに犠牲者の心を傷つけることが果たして許されてよいのかという点でひっかかるタイトルの付け方であったからです。

反戦平和の音楽は、クラシックでも数多くあるのですけど、中でもシェーンベルクの「ワルシャワの生き残り」という作品においては、アウシュビッツに対する怒りを激しく感じることはできるし、オネゲルの交響曲第二番の最後のトランペットの祈りには、心の底から平和を望む声を聴くことができます。ただし、この作品の場合は、作った作品の雰囲気が広島の原爆の惨状に似ていたからこのタイトルにしたというのが見え見えの気がします。

ただ、こうした機会を与えられたのも何かの導きということで純音楽として真剣に聴くことにしました。実際聴いてみたところ、やはり予想していた通り、そこには広島の犠牲者に対するシンパシイをまったく感じられない作品ではありました。

音楽は、8分程度の弦楽合奏なのですが、非常に厳しく強烈なサウンドで異様なものでした。異様にしている技法的な要因は、52の弦楽器がすべてばらばらの音を奏でているという点と、拍という概念がないこと、それと微分音を使ったトーンクラスター、ボディアタック奏法、ハーモニックス、グリサンドなどの特殊奏法。まあ現在では常套手段となっている前衛音楽技法の大方が集結している曲ということもあって、現在聴いても斬新すぎるぐらいのサウンドです。

実演ではこうした音だけではなく、視覚的にもおもしろいものがありました。
まずは、指揮ですが、無拍子ということもあって指揮棒を使わず両手で曲中ずっとべつべつの指示を出しつづける。両手首をお日様きらきらとという感じではげしく振るしぐさなどがあり、ほとんど指揮というより祈祷という感じでしたね。今までいろいろ現代曲の指揮は見てきましたけど、これほど変わった指揮法はみたことがないくらいで、たぶん楽譜がすごいことになっているのではないかと推測されます。

あと、弦楽器のボーイングがぜんぜんそろっていない状態で演奏される異様さ。なんかヤマアラシを見ているような感じでした。

こうしたミスター前衛ともいうべき曲を聴いていると、前衛作曲家と言われる人たちが、最先端のことをやっているつもりで、この人の作品の後追いと焼き直しをやっているというのがよくわかります。1959年の作品なんですけど、前衛音楽という世界はあまり進歩していないのが現状ですかね。

※坂崎紀さんがホームページで「ワルシャワの生き残り」についてすごく良い記事を書いています。人間のこころの叫びを具現化した真の音楽の力というものがどれほどのものか、是非とも皆様も聴いてみてください。

シェーンベルク:《ワルシャワの生き残り》——良楽は耳に苦し

●武満徹:カトレーン

武満の代表作のひとつで尾高賞の受賞作品。メシアンの「世の終わりのための四重奏曲」の編成を意識した作品で、ピアノ、バイオリン、チェロ、クラリネットのアンサンブル付きオーケストラというような感じで構成されており、アンサンブルとオーケストラとの対比が非常におもしろい曲です。武満の考えは、アンサンブルとオケ対立させるのではなく、アンサンブルでやった音形が徐々にオーケストラに拡散するというイメージですかね。そういうことで、何か銀河の渦の中心から周辺へ、またはその逆に中心に音が集まるという感じがします。

今回の演奏は私の好みからは少し早いテンポではありましたけど、十分に聴き応えのある演奏でした。生演奏は初めて聴く曲なので、少し感じたことは、アンサンブルの音量バランスとオケ側の音量に差がありすぎるので、せっかくの効果が少し薄れて感じられたことです。これは演奏者が悪いという意味ではまったくなく、こうした対処としてPAを介在して、10%くらい音量カバーするという考え方もあっても良いのではないか思います。このところは、クラシックの人は相当いやがるでしょうけど、曲によってはそうしてもらった方が、作曲家の意図が明確になると思うのですけどどうなんでしょうかね。

※カトレーンの誕生秘話ということで、音楽評論家の東条碩夫さんがおもしろい記事を書いていらっしゃいますね。

もっと武満徹の中の記事(MOSTRY CLASSICより)
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by ralatalk | 2005-07-24 00:32 | コンサート