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クラシック音楽を中心にしたポスト現代音楽のためのブログ


by ralatalk

大澤壽人作品

ナクソスから去年出ていた日本作曲家選輯「大澤壽人」が平成16年度文化庁芸術祭においてレコード部門優秀賞を受賞したとのことです。
わが国の大評論家達が選ぶレコード芸術のレコードアカデミィ大賞がショスタコービッチの交響曲第4番という歴史的評価の定まった作品に送られているのに対し、文化庁は真の芸術音楽に賞を送ったのです。「なかなかやるな文化庁」というのが素直な感想です。まあ前者の結果に関しては、日本のトップレベルの音楽評論家というものが「この程度のものなのか」という情けなさを感じていたのですが、今回の文化庁の判断は快挙ですなあ。これで1作品でも多く、大澤壽人作品が演奏されることを望みます。
 この人は戦前から戦後に活躍した作曲家ですが、その作品のレベルはプロコフィエフやショスタコービッチ以上のものを感じさせてくれます。この時代の日本のオーケストラはベートーヴェンをやるので精一杯であったのを考えると、それを遥かに超えた技術水準で曲を書いていて演奏至難であったことと、時代離れした天才であったために理解されるまでに時間がかかったのですね。ボストン交響楽団の指揮もしたことがあるということで指揮の才能もかなりあったのでしょう。もし日本に帰国せずに海外で活躍していれば、おそらく音楽史に残る業績を残せたはずなのですが、活躍するには日本の敵国である米国、英国、仏国であったことも運が悪かったですね。

で、ピアノ協奏曲 第3番。
 作品は当時としては斬新でモダン。これでも聴衆に妥協して書いているとは畏れ入ります。とは言え前衛音楽のようにぐちゃぐちゃではありませんので、その意味では安心して聴けます。2楽章ではジャズ風音楽も挿入しており、ラヴェル先生のピアコンも多少は意識していたのかなあ。まあ当時の流行ではありますが。
 ピアノパートはかなり難しく、スコアの指示どうりに演奏できないらしい。大澤さんはこれを自分で弾くために作っているので、ピアノの腕前もすごいものがあったのでしょうね。
by ralatalk | 2005-01-01 19:07 | 音楽エッセイ