クラシック音楽を中心にしたポスト現代音楽のためのブログ


by ralatalk

遊びの妙

テツラフ、3回目。今回は、トッパンホールへ。

 5月15日(日)15:00開演

 J.S.バッハ:無伴奏ソナタ第1番 ト短調 BWV1001
 J.S.バッハ:無伴奏パルティータ第1番 ロ短調 BWV1002
 バルトーク:無伴奏ソナタ Sz117

アンコール:
J.S.バッハ:無伴奏ソナタ第2番 イ短調 BWV1003: III. Andante




たまたま隣にいたご婦人から話しかけられた。
このご婦人、チェロの大家マイスキーのトリオを聴きにいったのだが、バイオリニストのあまりの凄い演奏に感動して以来ずっと、テツラフの演奏会に行っておられるらしい。楽器とかやっているわけではなく楽譜も読めるわけでもないけれども惹き付けられるものがあるとのこと。テツラフ以外にも、このような感動をあたえることのできるソリストを紹介してほしいと頼まれたので、5名〜6名くらい挙げておいた。ご夫人はそれを丹念にメモをしておられた。

今回は、前回、おや?と思った部分があったので楽譜をもっていった。もう少しこまかく聴きたいと思ったからだ。これは正解だった。テツラフは、非常にまじめに弾いているようで、実は楽曲のなかで密かにお遊びを入れているのがわかったからだ。

バッハの曲というのは、│:A:││: B:│という構造をしている曲が多い。Aを繰返し、Bも繰り返すわけだ。この繰返しの部分で、大胆に装飾音を入れてきているのだ。特にゆるやかな曲で派手にやっているわけなのだが、それが実にうまく、まるでエッシャーのだまし絵的にやっているので、注意深く聴いていないとわかならないかもしれない。

これとは、別に感心したのは、パルティータ第1番のAllemandaの出だしだ。この曲は重ったるしく演奏するソリストが多いのだが、付点音符のたくさん入る曲の特徴をうまく生かし、軽くリズミカルに処理。このおかげでレガートの部分との対比がついて曲に立体感がでるのだ。

それと超高速のDouble: Prestoと最後のDouble。第3番では、ちょっとやり過ぎているのではないか思ったのだが、パルティータ第1番は全体的に単調な曲なので、これくらいのメリハリを付けておくのもよかろうといったところか。

もとにもどって、第1番のソナタのAdagioなのだが、これは意外にもオーソドックス。次のFugaもそうかと途中まではそう思っていたのだが、後半の32分音符の連続のところで、まったく速度を落とさずにあっさりと弾いていたのは凄いと思った。
激しく行ったFugaの後に聴く、次のSicilianaもゆったりとした音楽で格別。バイオリニストはやはり音色が命だ。最後のPrestoも猛烈だったなあ。

そしていよいよバルトークの無伴奏ソナタになるのだが、正直この曲、まともに弾けるソリストはほとんどいないし、音色が汚くなるので、あまり聴きたいと思わない曲であるのだが、そこはテツラフの卓越した技術で聴くと、弦楽四重奏でも聴いているかのように各声部が明確になり、和音も豊かに響く。そしてこの和音が驚異的なくらい濁らないのだ。いや〜ほんとに。この曲をこの解像度で演奏できるソリストがいたなんて驚愕だ。弱音もかすかすれの実に味のある音色だったし。
演奏が終った直後、観衆はウオ〜!となってましたから相当に凄い演奏でしたね。

ということで、現役モダンバイオリニストのなかで、群を抜いたソリスト。ハイフェッツ、ミルシティン、クレーメルのよいところが合体したパーフェクト・プレイヤーだと感服。また次の機会があれば、演奏会に行くと思います。

このレベルを越えるソリストは、ヴィクトリア・ムローヴァということになるのだろうが、彼女はいつ来日するのだろうか。頂上対決を聴いてみたい気がする。
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by ralatalk | 2011-05-15 23:39 | コンサート