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クラシック音楽を中心にしたポスト現代音楽のためのブログ


by ralatalk

大天使テツラフ降臨

震災の影響もあってここのところ演奏会のキャンセルが続いております。
楽しみにしていたヒラリー・ハーン、ムター、モザイクカルテットがキャンセル。クリスティアン・テツラフもどうなることやらと思っていたら、ピアニストがキャンセルになって、3回予定のベートーヴェンのバイオリンソナタ全曲演奏会がキャンセル。替わりにバッハの無伴奏バイオリンソナタとパルティータの全曲とバルトークの演奏会に変更。

5月12日(木)19:00開演
 J.S.バッハ:無伴奏ソナタ第2番 イ短調 BWV1003
 J.S.バッハ:無伴奏パルティータ第2番 ニ短調 BWV1004
 J.S.バッハ:無伴奏ソナタ第3番 ハ長調 BWV1005
 J.S.バッハ:無伴奏パルティータ第3番 ホ長調 BWV1006

5月15日(日)15:00開演
 J.S.バッハ:無伴奏ソナタ第1番 ト短調 BWV1001
 J.S.バッハ:無伴奏パルティータ第1番 ロ短調 BWV1002
 バルトーク:無伴奏ソナタ Sz117




心配していたのが、このプログラムの変更が急であったため、テツラフは大丈夫なのかということ。
本日行ってきた12日のコンサートでは、当日券もあったくらい。このクラスのバイオリニストでは非常に珍しいこと。

で演奏会の方だが、ソナタの第2番から。
「お〜、なかなか良い感じ。というか世界中のバイオリニストのなかでもピカいちの音色ではないか。」
柔らかい。実に柔らかい。それでいて音色は太いぞ。各声部のバランスがとてもよく、まるで教会の大オルガンがなっているかのように、ホールを響かせている。ここまでできる人の演奏をいままで聴いたことはない。バイオリンとホールが共鳴しあっている祝福の残響効果。

  最初から気合いがのっている。まるでこの被災にあった日本国民のために全身全霊を捧げようとしているかのようだ。柔らかい音は、テツラフの体がとてもやわかいことからできる技。人がバイオリンを弾くという次元を越えている。バイオリン自体が生命をもち、バイオリンの歌いたいまままに、自由奔放にテツラフを動かしている感じ。しかも1本のバイオリンなのに各声部が独立して聴こえてくる。バス、テナー、アルト、ソプラノという風に。

ずっと聴いていると、大天使ミカエルがバイオリンを弾いている感じすらする。薄青白い羽すら見えているぞ。

次のパルティータ第2番。

アルマンド。いきなり強く入る出だし。ほとんどの演奏家がゆっくりと静かに入るのだが、これには驚いた。意志の力を感じる強い出だしだ。想い。想い。想い。テツラフの熱い想いだ。
この緊張感を伴った想いは、クーラント、サラバンド、ジーグ、そして、人類最高の曲とも言われるシャコンヌへと連結されていく。
シャコンヌという曲は、バイオリニストのすべてだ。しっかりとした技巧の上に立つその演奏者の人生観が映し出される。テツラフは無垢だ。ただひたすらに無垢。そこにあるのはバッハの音楽のみがある。すごいスケールの音楽。広大な、広大な音楽が流れる。人は驕らず、すべての人に眼差しを。

このくらいの集中力をもって終えた前半。休憩後の後半はどうなるのかとドキドキしたが、さすがのテツラフも少し疲れがみえる。少々雑な箇所も散見されるようになってきた。でもよい。これくらいが人間のこなせる限界なのだから。

次回も行く予定。またひとり偉大なバイオリニストを発見できてとても幸福だ。
by ralatalk | 2011-05-13 00:33 | コンサート