クラシック音楽を中心にしたポスト現代音楽のためのブログ


by ralatalk

カルミニョーラのボーイング

本日もカルミニョーラのコンサートを聴きにトッパンホールへ。
演奏会が終ってこれほど喜ばしい顔をしている方々をみるのは気持ちよい。各地でのコンサートのブログも読んでいるが、やはり大好評のようだ。

ジュリアーノ・カルミニョーラ(ヴァイオリン) / ヴェニス・バロック・オーケストラ

●プログラム
 ヴィヴァルディ:弦楽と通奏低音のためのシンフォニア イ長調 RV158
 ヴィヴァルディ:弦楽と通奏低音のための協奏曲 ホ短調 RV133
 ヴィヴァルディ:弦楽と通奏低音のためのシンフォニア 変ロ長調 RV167
 ヴィヴァルディ: ヴァイオリンおよび弦楽と通奏低音のための協奏曲
 変ロ長調 Op.8-10 RV362 《狩り》
 変ホ長調 Op.8-5 RV253 《海の嵐》
 ハ長調 Op.8-6 RV180 《喜び》
 ト短調 Op.8-8 RV332
 ニ長調 Op.8-11 RV210

●アンコール

タルティーニ : ヴァイオリン協奏曲 イ長調 D96より 終楽章 Largo andante

ヴィヴァルディ : ヴァイオリン協奏曲
  第2番 ト短調 「夏」 RV315より 第3楽章
  第3番 ヘ長調 「秋」 RV293より 第1楽章
  第4番 ヘ短調 「冬」 RV297より 第2楽章
  



今回は、前から2列目の左側の席だったので、カルミニョーラのボーイングを間近にみることができた。
カルミニョーラのバイオリンは非常に多彩な音を出すので有名だ。とりわけスピカートの種類が豊富。でもモーツアルトの演奏のときに気がついたのだが、ゆったりとしたボーイングにおいても非常に細やかな音色の変化をつけて演奏している。バロックボーの特徴もあるのだが、アップボーとダウンボーで音色が異なる。それも弓先での音色変化と弓元での音色変化も随分と付けられる。カルミニョーラは、その特性を生かして以下のように考えて弾いているように思えた。

1. 弓先
  早いパッセージを弾く時にややアップボーを強めに演奏し、音色に変化をつけていた。弓先でのアップボーでの音色変化は、バロック・バイオリンだと酸っぱい感じの音色になる。ダウンボーだと甘い感じの音になる。

2. 弓中
 これは、普通に弾くときのポジション。ノーブルな音色を要求するときにこの位置にくる。カルミニョーラは、わりと弓中よりも弓先の方で弾く傾向が高かった。ちなみオーケストラの方は、弓中中心。カルミニョーラの合図によって弓先へ移動することがあるので、オーケストラとソリストで音色変化をしっかりつけていることがわかった。

3. 弓元
 弓を持つ位置が、バロック弓ということもあって弓先よりを掴んでいたが、掴んでいる位置より弓元に来ることはほとんどなかった。ただ、強い音を出すときに一瞬に弓移動し、ガツンガツンといわせる音量は相当なもの。

4. 全弓
 緩やかな曲想のときは、全弓で弾いている。これも面白いことにダウン・ボーのときに甘くゆるやかなビブラートをのせる。アップボーのときは、割りと素直に音色にしている。

5.特殊系
 弓を動かしている間に少し弓を浮かせたり沈めたりしながらの微妙な弓コントロールで連続的な音色変化をつけて弾く事がある。他のバイオリニストではみたことがボーイング。私はこれを風のボーイングと呼ぶことにした。これは、カルミニョーラにしか出せない音だ。

6.スピカート
 何種類かに使いわけている。私が確認できたのは、エッジを効かせた鋭いスピカート。大きく跳ねるスピカート、小さく跳ねるスピカート。高速スピカート、ハンマーで打ち下ろすかのようなゴツン・スピカート。感心したのは、ビバルディのような繰返しの多いフレーズにおいて、効果的なのだが、フレーズごとに、スピカートの種類を切り替えていたこと。この効果によって、ビバルディの音楽がとても新鮮に聴こえる。

7.D線とA線
 中音域において、サックスに似たような音で演奏することがある。これまた不思議な感じ。アダージョ楽章においては、実に人の声といった感じで、うまく決まっている。

8.肩当てと顎あて
 古楽の演奏者は、肩当てと顎あてをしないことが主流。カルミニョーラはそのところはお構いなしといったところか。たぶんあの激しい動きを受け止めるためには必要なのだろう。わたしもそこにはこだわりたくない。大切なのは音楽だ。

と細かく聴いていたのだが、やはりこういう聴き方は、音楽の全体像をとらえる方向からするとあまりにも枝葉末節にこだわりすぎるのでよくない。後半は普通に聴くように切り替えた。
それにしても弾きながら、あるときは目で、あるときは背中で、ここまでアンサンブルを生き生きとさせることができるとは、相当なカリスマ力。クラシックのバイオリニストの範疇を越えて、ロックコンサートの凄腕ギタリストといった感じがした。とくにアンコールで演奏した、夏はおもわず会場から「すごい」という声(複数)が聴こえてきたくらいだ。

ということで充分に堪能。
また、2年後くらいに来日してほしい。
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by ralatalk | 2010-11-30 23:45 | コンサート