クラシック音楽を中心にしたポスト現代音楽のためのブログ


by ralatalk

ピアノ VS バイオリン

日下紗矢子さんのリサイタルにいってきました
お目当ては、シュルホフ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタです。
シュルホフは、ナチスから退廃音楽のレッテルを貼られヴュルツブルク強制収容所送りになったチェコの作曲家。この人の作品は、才気にあふれており、私が最近特に注目している作曲家の1人です。特に注目すべき作品は、ピアノ協奏曲「ジャズ風に」(1923年)Op.43で、初めて聴いたときには仰天したくらい斬新な音楽です。



【公演日】 2010年3月14日(日)
【会場】 トッパンホール
【時 間】 15:00開演
【出 演】 日下紗矢子(ヴァイオリン) / ブルーノ・カニーノ(ピアノ)
【曲 目】 ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第2番 イ長調 Op.100
      バルトーク:ヴァイオリン・ソナタ第2番 Sz76
      シュルホフ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ
      シューマン:ヴァイオリン・ソナタ第2番 ニ短調 Op.121





●感想:

今回は、気合の入ったプログラムがよかったのか、満員御礼。
前回も日下さんのリサイタルに行ってきましたが、前回と似たような感想。技術的には安定していてうまいが、表現が平凡。音楽の自発性とか、自由さがほしい。技術に関しては、前回よりも少し向上した感じ。シューマンは大熱演でよかったです。ソリストに求められるのは、やはり存在感。鬼才クレメールとか、極める女王ムローヴァとか、カリスマのカルミニョーラとか、曲芸のギトリスとか、サイボーグ・ハーンとか、すぐにキャッチフレーズがすぐに浮かぶくらいの存在感がほしい。

一方、伴奏者のブルーノ・カニーノさんはすごかった。カニーノさんのピアノは、アティーキュレーションが非常に細かくまるで弦楽器で演奏しているかのよう。ペダルも細かく、適切に踏み、音を濁らせることはない。旋律が豊かに浮き立ち、歌心がある。要所、要所で、ソリストの顔をみてアイコンタクトをとっていたのが印象的。ソリストに合わせるところは、合わせ、伴奏として出すべきところは出し、ひっこめるところはひっこめる。自由な横の線のうごきを重視しているピアノ。作曲家ということもあって、音楽に深い洞察力を感じさせます。

それもそのはず、パールマン、アッカルド、ムローヴァ、アモワイヤル、ウート・ウーギなど名バイオリニストとの共演をよくやっているのですから、音楽が一流なのもうなずけます。アティーキュレーションの取り方は、豊富な経験に基づいているので、このくらいの経験を積んでいるバイオリニストでないと、釣り合いが取れないのかもしれません。こんなピアニストに伴奏してもらえたのだから、日下さんもずいぶんと勉強になったことでしょう。

さて、感想です。

  1. ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第2番 イ長調 Op.100

    最近、この曲をいろいろな人の演奏で聴いて思うのですけど、若造では演奏できない大きな壁がある曲ではないのか思っています。理由は、ピアノパートにあるのですけど、分厚い響きですごく丁寧に書かれているためバイオリンよりもピアノが引き立つところが多いのに、バイオリンパートは単音の旋律を重視した比較的シンプルなもの。これでは、バイオリンの方がよほど表現力でがんばらなくては、ピアノに持っていかれます。やはり、その分を補う駆け引きが重要なんでしょうけど、日下さんは、その点で力不足。観客もその点は正直で寝ている人が多かったです。
    今年、ムターもこの曲をやるので聴きにいきますが、女王ムターの貫録や如何にという感じで期待しております。

  2. バルトーク:ヴァイオリン・ソナタ第2番 Sz76

    この曲もかなりの難曲ですが、どこに焦点をあてておくべきかをある程度計画していないと、面白みにかけます。カニーノさんはこれがわかっていて、仕掛けどころで、チェスの名人のようにおもいきった手を次々に打ってきていましたが、日下さんは、それに対応できていないというか、反応に鈍さを感じました。ピアノの挑発に対して、堂々と突っ張るところは、突っ張らないといけません。そういった箇所で合わせにいこうとすると曲が死にます。演奏自体は丁寧でしたが、バルトークでは、こうした野生味も大事な要素です。

  3. シュルホフ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタs
     
    この曲は生演奏で聴けただけでも幸せ。バイオリンのテクニックを統合したような技巧が満載。特に左手のピチカートが印象的。とは言え、この曲をメジャーにさせるには、シュルホフの才気溢れる音楽のからくりを浮き立たせることが大切。この曲も日下さんは丁寧に演奏。完成度としては、90%くらい。残りの10%を補う遊び心がもう少しあってもよかったですかね。

  4. シューマン:ヴァイオリン・ソナタ第2番 ニ短調 Op.121

    うわさには、聞いていましたが、これほど大変な曲だったとは。バイオリンが休む箇所がほとんどなく、重音も頻繁に出てくるので忙しい。いわゆるヴィルトオーソの極み。こうした曲なので、さすがの達者な日下さんもこの曲だけは、余裕なし。そこに、はらはらさせる隙間がでてきたのですが。そのことにより、音楽に対する熱意というものが伝わり、聴衆の方も集中力も上がってきたのがわかりました。ピアノの挑発にもよくこたえていましたからね。その甲斐があって、演奏が終わったあとに熱気に包まれた拍手がありました。聴衆というのは正直ですから怖い。

     いつもこのくらいのハラハラ感で演奏できればよいのに。安全運転はつまらんですよ。「ハラハラの紗矢子」。こんなキャッチフレーズもあっても面白いのですけど、これは意地悪な評論ですね。そういえば、カルミニョーラーにしてもイダ・ヘンデルにしても、ミンツにしてもはらはらさせられることがあるから面白いのでしょうね。

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by ralatalk | 2010-03-15 18:07 | コンサート