クラシック音楽を中心にしたポスト現代音楽のためのブログ


by ralatalk

カリスマを制するは匠

前回の「大先生とピアニストさんの空気を読んで発言を控えました。それが私の得意技です。」というような減点を極度に怖れるコンクール・ミュージックな演奏を聴いて自分のなかにあるクラシック音楽というものが汚されたような気がしてかなり鬱状態に。それをおみそぎしてくれる音楽会と期待して、聖地サントリーホールへ行って参りました。

ハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー
曲目 マーラー :交響曲第9番 ニ長調
指揮 大植英次
開演 15:00 サントリーホール




マーラー の交響曲第9番と言えば、この曲をもってクラシック音楽の最高作品としてあげる人も多い人気曲のひとつ。数々の名演があり、私もバーンスタインの指揮、イスラエルフィルの生演奏を聴いて多いに感動したものです。それ以来の生演奏になります。随分と遠ざかっていたものです。マーラーに関しては、昔は本当によく聴いていました。久しぶり聴くと、やっぱりいいですね。「魂の芸術」かくあるべしという感じです。

大植さんのマーラーと言えば、マニアの間でも大変な物議をかもし、賛否両論がうずまく珍しい状況になっています。各ブログを読んでいるといろいろな意見があって面白いのですが、やっぱりここは自分で判断すべきであろうということで、演奏を客観的に聴くためにスコア持参でコンサートへ行きました。

●今回の秘密兵器であるオーケストラ・スコア
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で、演奏を聴いてみたのですが、うわさ以上のカリスマ性のある演奏でした。カリスマというとスコアをないがしろにしている要素も入るのかと思っていたのですが、まったくその逆でスコアをかなり細かく読んで、楽団員の一人一人に、綿密にアーティキュレーションを指示しています。感心したのは、p,mp、f、mfの違いもきっちりと区別しているし、細かな装飾音符のひとつひとつにまで気配りされています。弦楽器の第一バイオリンもマーラーの指定した通りのボーイングで演奏、アクセント記号も忠実に再現しており、すごいこだわりを感じました。

マーラーのスコアを読んでいる人は、わかると思うのですが、とても細かくアーティキュレーションを指定しているためすべての指示を守るのはオーケストラとしても大変なことなんですけど、大植さんは、テンポをすごく遅くすることによってこれを再現しようとしているのです。特に激しいテンポの3楽章でも、すごくテンポを落としています。普通はこんな演奏をすると破綻しかねないのですが、各楽器がものすごく細かくアーティキュレーションつけ、かつ一音一音に魂をこめて演奏しているため遅いテンポでもすごく緊張を持続させているのですね。これはすごい驚異的なことです。普通のオーケストラでは、このテンポについてこれないでしょうけど、かなり練習を積んできたのか、まるでムラヴィンスキー/レンフィルのようなアンサンブルになっています。

それと感心したのが、オーケストラの音色の追求。この曲のための奏法をかなり研究されていますね。グロッケンとか、トライアングルとかの打楽器もこの曲の少し過去を懐かしむような部分にあうように柔らかくアレンジしているし、ティンパニのたたき方にもすごい説得力があります。金管楽器群もすごい。この遅さで演奏されたら息がもたなくなるのではと心配してしまったのですが、まったく微動だにしない安定力とパワー。音色もこだわりまくっている。ミュート類の音色もすべて曲にあうようにしてあるのですね。
コンサートマスターのソロも存在感あるし、各木管楽器の主席のソロ能力も極めて高い。

楽団員の皆さんが、マエストロの大植英次のために最高の演奏をしてやろうじゃないかという気迫にあふれています。こんな演奏なので、第一楽章から涙が出そうになり、第四楽章では本当にやばかったです。

カリスマを制するのは日本の匠。匠の技術をもって世界の頂点へ。大植英次ならその可能性が高いと思いました。ベルリンフィルの主席指揮者につくのはそう遠いことではないのではないでしょう。

これで私の心もすっかり浄められました。ありがとうございました。
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by ralatalk | 2009-06-28 18:42 | コンサート