クラシック音楽を中心にしたポスト現代音楽のためのブログ


by ralatalk

シカゴよ、あなたはどこへ行く

本日は、著名なコンサート・ブロガーの方々が絶賛しているハイティンク指揮、シカゴ交響楽団の演奏会に行ってきました。曲目は、ハイドンの時計とブルックナーの交響曲第7番です。

それにしてもですよ。何かいつもと違う。これは何だろうと自問自答で帰途につきました。



バチあたりで贅沢な愚痴なんですけど、まったくおもしろくない演奏。こう言えば、悪く聴こえるかもしれませんが、内容的には、そのまったく逆の完璧ですばらしい演奏。
※ちなみに私はハイティンクのファーンです。

完璧でミスもほとんどなし。鳴るべきところで鳴り、退くべきところで押さえる。弦よし、管よし、打楽器よし。音色、音量、ダイナミックス、リズム、問題なし。弦、金管、木管、打楽器の相手の出方をすべて先読みしつくしている緻密な連携とバランスの良さ。指揮者に棒を振られる前に音楽の行き先が決定している手際の良さ。それゆえの破綻なき進行。ハイドンならこれもあるかもしれないが、ブルックナーですらこのバランスが崩れない。シカゴSOにとっては、ブルックナーなんぞは、ベートーヴェン、ブラームス、チャイコフスキーのような通常レパートリーのように手慣れた曲となっているようです。

だからこそ、つまらない理由について、ずっと考えています。
「ハイドンが古楽的演奏ではないからか?」
「ブルックナーが好みの作曲家でないからか?」
「オケと指揮者との葛藤が感じられないからか?」
このような単純な理由ではなさそうです。

ここまで完璧にできているオケならムラヴィンが客演したとしてどう考えるのだろう。と、ふと思ったときに思い出しました。ムラヴィンの有名なエピソードにあのブル7のキャンセル事件があります。詳しくは、 ウィキペディア にも書いてありますけど、以下、引用です。
「ムラヴィンスキーはオーケストラのメンバーが完璧だと思っても満足せずに、家でスコア研究をし尽くし、メンバー全員にぎっしりと書き込みで埋まった楽譜を配布した。通しリハーサルの日は何度も何度も繰り返し細かい要求に答えなければならず体力的に厳しかった。忘れられない一日となった。最後の通しリハーサル(ブル7の演奏)のときはあまりにも完璧で信じられない演奏となり、そのクライマックスではまるでこの世のものではないような感覚に襲われた。しかし、最も信じ難いことは、ムラヴィンスキーがこの演奏の本番をキャンセルしてしまったことであった。その理由は『通しリハーサルのように本番はうまくいくはずがなく、あのような演奏は二度とできるはずがない』というものであった。」

このコメントとして、作者は、ムラヴィンスキーにとって演奏は神に捧げるものであり、その時点で上手くいってしまえば後はどうでもよいものであった。と記載しています。

でも、常日ごろ、ムラヴィンは、「私の音楽が正しいかどうかは、コンサートホールに来てくれている観客が決めることだ。」と言っていることを考えると、あまりに完璧な演奏は、観客の思考をマヒさせる危険性があるため、あえて本番をキャンセルしたのではないかと邪知しています。音楽を聴衆に一方的に与えるのではなく、ともに深く考えようとすることこそが大事。押しつけられる美学ではなく、自らが感じる美学でなくてはならない。ショスタコもたぶんそのように考えていたはず。

「安易に答えを子供に教えるな! おやじの背中は常に子供にみせておけ」
というようなものですかね。

ブルックナーやマーラーがベートーヴェンの交響曲のようなレパートリーになってしまった楽団が増えた今、やはり新しいものがでてくるべきというか、そういうものを作っていかないと、この先、シカゴ、ベルリン、ウィーンフィルのような最高のオケが最高の表現技法を維持できなくなってくるのでしょうね。芸術にとって停滞や惰性は死を意味しますからね。

そろそろ次のステージへ観客も移行するときなのかもしれません。

●追記
とは言え、新しい音楽にはリスクはつきまとうので、なかなか演奏会へ行くには足が重いもの。特にわけのわからんドカチン系音楽は避けたいもの。ららトークお勧めは以下のコンサートです。狙いは日本人作曲家の古典を探るというものですかね。おもしろい曲です。現代曲ですけど、ショスタコやマーラーが好きな人ならぜんぜん大丈夫です。


読売交響楽団:第481回定期演奏会

会場:サントリーホール
2009年4月 7日(火) 19:00開演

指揮:下野 竜也
男声合唱=東京混声合唱団

◆芥川也寸志(没後20年):
 エローラ交響曲
◆藤倉大:
 読売日響委嘱作品【世界初演】⇒この曲は知りません(ごめんなさい)
◆黛敏郎(生誕80年):
 涅槃交響曲

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by ralatalk | 2009-02-04 00:42 | コンサート